敢えて☆5つ。文学やそのほかの芸術に対して満腔の敬愛を注いだ編集者による全力投球の遺書であるゆえ。死を前にした編集者の鬼気迫る言葉などというものもあるかもしれない。しかし、そのことよりも、ここに選ばれた作品に対する徹底的な読み込み、そして作品のよさを伝えようとする真摯さにおいて到底凡百の評論家や学者の及ぶところではない。
本書を読んでみて、これら50作品を読みたいと思わないような読者は、およそ小説がなくても生きていけるシアワセな方々なのだろうと愚考する。しかし、ヤッサンはその上の配慮をしている事に気付く。多くの作家を馬鹿呼ばわりし、日本など滅びてしまえと罵倒しながらも、彼は編集者として、徹底的に文学の愛を語る。文学や小説を甞めるなと絶叫しているのだ。
彼は、常にまず読めと言っているのだ。
作家や詩人に対するときだけでなく、編集者にも厳しい。彼はまず馬鹿編集者と呼びかけている。『編集者の仕事』という著者もあるが、この毀誉褒貶の激しいスーパーエディターは、我々読者、そして編集者にも「もっと愛せよ」と語りかけていたのだ。
彼は死後、村上春樹の生原稿を古本屋に売っていた咎で批判にさらされた。しかし、彼の出版、文学、本に対する愛は本物だったと思う。その咎はどうかはともかく。
出版不況は、洒落にならない状況だ。もうだめかもしれない。ヤッサンは「もうだめだ」といってこの世からオサラバしたような気がしてならない。本書は文庫化すべし!!!
乱読すれど乱心せず―ヤスケンがえらぶ名作50選
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