ひとつ前に戻る

復活の日 (ハルキ文庫)
小松 左京
価格: ¥861 (税込)

文庫
出版社: 角川春樹事務所
発売日: 1998/01
ISBN: 4894563738
おすすめ度:4.5
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小説としての完成度は今ひとつではないか?
感染症によって人類が存亡の危機を迎えるという設定、少しずつ世界中で死に絶えていく臨場感ある描写は秀逸。

しかし、延々と続く専門的な病原菌の説明や登場人物による文明論など退屈な面も多々あり、ところどころで読み疲れした。また、主人公と呼べる登場人物がおらず、場面がいろいろ飛ぶので誰に感情移入して良いかわからず、物語に入りこみにくい。
先見性と構想力に驚く
数年前の中国におけるSARSウィルスの蔓延とそれを水際(香港)で食い止めた義士達の活躍を描いた迫真のドキュメンタリー「史上最悪のウィルス」の刊行によって再評価を受けている作者の代表作。本作で描かれる、ウィルスが原因で人類滅亡の危機に陥るという設定は、まさしくSARSウィルス蔓延の過程と酷似していて、作者の先見性には脱帽する。それも、宇宙からやって来たウィルスMM(Marcial Murder)を細菌兵器として使用するつもりが、逆に自らを含む人類の滅亡を招くという構想に、作者の強烈な風刺性を感じる。ウィルス蔓延を阻むべき政府、機関が国家間の争いによってチャンスをフイにするという皮肉も効いている。全篇を通して、キリスト教的世界終末観、殉教精神が描かれているのも特徴。

ただし、物語の構成には工夫の要があろう。エピソードが過剰に挿入され過ぎていて、肝心の迫り来るウィルスに対する恐怖が読む者に伝わって来ない。焦点がボケているのだ。作者の生物学、物理学、軍事兵器等に関する衒学趣味も頂けない。また、登場人物が突然空虚な演説を延々と述べる場面が幾つかあるが、読む方はシラケるばかりである。

現代人が過信している自らが築いた社会・科学が如何に脆いものかを描くという姿勢が貫かれている点が好ましい。南極で生き残った人々に希望の光を見るラストは、作者自身が抱く僅かな希望そのものと捉えたい。
滅亡だけでは終わらない!
本作は世界各国(特にアメリカ・ソ連・イギリス)の軍関連の研究所で作り出された細菌兵器による人類滅亡の詳細経緯と、その後に残された人々の状況を描く。
核兵器ではなく細菌兵器での人類滅亡ということなのでとても興味を惹かれた。
さすが小松御大だけあって死に至る人々や廃墟と化した大都会の描写は非常にリアルティに溢れていて手に汗握った。また、細菌製造にいたるまでの各国家の思惑や、急激な人口減による政治経済の混乱を描ききっているのも非常に良かった。

余談になるが、人類滅亡の関連作品としてネビル・シュート作の『渚にて-人類最後の日』を挙げておく。

人間存在のはかなさ
「たかがインフルエンザのためにか?」
ウィルスによる人類滅亡を描くSF小説。

最近も新聞をにぎわせている「鳥インフルエンザ」。たかが風邪、などと侮っていると、とんでもない。この小説を読めば、鳥インフルの恐怖を「死亡率50%」「かならず流行し、世界中に甚大な被害をもたらす」などとったWHOからの警告とともに、非常なリアリティをもって実感できる。

本書は、1960年代の冷戦構造の中で書かれた小説である。社会構造はそれから大きく変わり、核戦争の恐怖はいくぶん後退したが、本書で扱われているウィルスの恐怖のリアリティは全く色あせていない。今読んでも鳥肌のたつような戦慄を覚える。

ちょっとしたきっかけで滅びる人類のはかなさ。再度映画化される著者の『日本沈没』とともに、SFファン以外にも是非読んで欲しい作品。
破局を書かせたら最高の人です
舞台仕掛けが、今起こっているかもしれないと思わせる
ものを選んでいるところに恐ろしさを感じます。
ブラックホールや日本沈没にはそれほどの現実感は
ありませんが、さすがにこれはおっかない。
この作品が出てかなりたった今、生物兵器なんかなくても
こうなる可能性はあるという現実を突きつけられていますから。

SFとしての仕掛けは言うまでもないのですが、
滅び行く人々、社会の描写があまりにもすごい。
「誰もいないの!」と熱にうかされながら電話に叫ぶ女性、
無駄とわかっていても病院の列に並ぶ人々、そこで倒れる医師。
あまりにもリアリティありすぎ、思わず自分が登場人物になった
気分になれます。

これを映像化するのは大変でしょう・・・・・




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