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空海入唐―虚しく往きて実ちて帰らん
飯島 太千雄
価格: ¥2,310 (税込)

単行本
出版社: 日本経済新聞社
発売日: 2003/10
ISBN: 453212381X
おすすめ度:5.0
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空海の実像
空海は、弘法大師として伝説的に伝えられている印象が強い。この伝説の人を生身の人として実在感を持たせて目の前に立たせてくれたのが、この飯島太千雄氏の『空海入唐』である。書道史研究家である著者は、その永年の空海の書の研究を土台とした緻密な資料の検証を元に空海を描き出してくれる。描き出されている空海は、知識欲が強く、宇宙を理解する為にあらゆる機会を捕らえ勉強に没頭した理想的な優等生と写る。並みの優等生ではなかったかもしれない。宇宙を知る為には唐に行かねばならないと決め、その準備を周到にした。入唐後、唐の知識人を驚嘆させたその文章力や書の巧みさは、それまで、人並みならぬ努力を重ねてきた結果であろう。自分の信ずる物を追求する為に、世の中の動向にも精通し的確な判断をしていた事が分かる。各地の伝説にある魔術師としての空海ではなく、真理の探究者としての空海、この1200年も前の人に好感を持つ。
全身全霊の表現者 空海
万能の天才・空海は、丸ごと不思議な存在でもある。自然、本好きの好奇心を刺激し、空海に関する書籍は山ほど出版されている。そこへまた1冊が加わった。しかし本書のアプローチは、実に風変わりである。あえて舞台の一角にだけ強烈な照明を当て、これまで見たことのない空海像を浮かび上がらせる。「宗教者以上に、表現者であった空海」! 具体的には、まず空海の謎だらけの前半生だけが切り出されることに意表を突かれる。ここはラフ・スケッチで済ませるかフィクション仕立てにするのが普通で、後半生の偉大なる弘法大師像を中心に据えるものである。伝説の霧に包まれた前半生に分け入り、読者に強い説得力を感じさせる武器は、著者の独壇場である書道史研究からの切り込みである。これが本書第2のユニークさ。空海の書字研究だけでも30年という。気の遠くなるような研鑚をベースに次々と新説が展開され、ミステリーを読むような興奮に誘う。例えば有名な三教指帰(さんごうしいき)と、24歳の時に書いた聾瞽指帰(ろうこしいき)の綿密な比較。空海入唐1,200年記念の今年、私は京都の「空海 高野山展」で国宝・聾瞽指帰を初めて知り、これが天才というものかと圧倒された。その感動の余韻もあり、著者の精緻な分析にまさに目から鱗が落ちる思いがした。それにしても空海の定説に挑戦するなどという行為は、権威を恐れぬ勇気と信念がなければ出来ることではない。全身全霊を傾けて「表現者」として生き抜いた空海、その書の写真と共に、どうしても言わずにおれない著者の切迫感が二重写しで伝わってきた。本書があまり空海と縁のなさそうな日経から出版されたのは、日本のビジネスマン諸君、さぁ胸を張って自己表現しよう!とのメッセージなのかもしれない。速読よし、再読精読またよし。元気の出る、新・空海論である。
1200年前の躍動
空海の書から、彼の人を追い続けて30年という著者の燃えたぎる想い。
そして才気あふるる空海の気鋭。この二つがぶつかり合い、いつしか一体と
なった、時空を超えた火をふくような本…
空海研究の新しい発見。それにまったくの素人の私は、おそるおそるこの本を手に取り、ページを繰るごとの「え?」「あ!」「なるほど」。

空海と著者の熱き魂にぐるぐると巻き込まれ、気はつけば、その余韻が
身体中に満ちている、という一冊でした。

著者もまた、すばらしい表現者
出だしから著者の意気込みと迫力が伝わり、室戸岬の果てしない大きな空と広い海が目に浮かんでくる。著者の空海をたどる「心」は、誰のものでもない、著者自身の「心」であり、心の奥深いところから湧き上がる「人間愛」そのものではないだろうか……。「表現者・空海」を著わす飯島太千雄氏自身もまた、すばらしい表現者であり、空海も喜んでいることだろう。
何だかいい
空海のことはほとんど知りませんでした。仏教のことも書のことも分かりません。それでも、この本は興味深く読めました。

昔の奈良のお寺が、国際色ゆたかな学問の場だったということを知ると、これからは今までのただの観光とは違った目で寺社を見ることができそうです。当時の奈良の町の中では、大安寺とか元興寺とかが驚くほど広い敷地を占めているというのも面白いと思います。何か、今の都市には無い複合的な役割を持った都市施設だったんだなということが感じられて。

とにかく、途方もない天才が1200年前の日本にいて、当時の文化の中心だった唐の長安で気を吐いた、というのが何だか誇りに思えてとてもいいのです。




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