ひとつ前に戻る

犬はどこだ (創元推理文庫)
米澤 穂信
価格: ¥777 (税込)

文庫
出版社: 東京創元社
発売日: 2008/02
ISBN: 4488451047
おすすめ度:4.0
Amazon ランキング: 16888位
発送可能時期: 通常24時間以内に発送

amazonの詳細ページへ
なるほどねえ
 2005年に出た単行本の文庫化。
 犬探し専門でやっていこうと探偵業を始めたのに、なぜか陰惨な事件に巻き込まれてしまうというハードボイルド。
 犬探しの小説家と思って読み始めたのに、いつまでたってもそんな話は出てこない。犬好きの私としては、不満の残る一冊であった。まったくタイトルのとおりだ。
 それはともかく、ミステリとしては面白かった。古典部シリーズなんかより、ずっと良く出来ていると思う。ラストのドンデン返しも見事。一気にすべてのモヤモヤが解き明かされ、爽快だった。
 シリーズ化の予定とのことなので、次作はぜひ犬の話を。
ひねりを利かせた洒落たプロットの妙。気が利いていて、面白かったなあ
 佐久良桐子(さくら とうこ)という失踪人を捜す羽目になった<私>こと紺屋長一郎(こうや ちょういちろう)。一方、小伏(こぶせ)町の古文書の由来を調べることになった<俺>こと半田平吉(はんだ へいきち)ことハンペー。本来、犬捜し専門の調査事務所「紺屋S&R」の所長と所員であるふたりの調査が、章ごとに、ほぼ交互に記述され、それぞれの調査の線が微妙にクロスしていくところ。気が利いていて、面白かったなあ。殊に、サブの事件かとばかり見えた古文書の解読調査の中に、意外や、メインの事件と思しき失踪人調査につながる鍵が潜んでいたところ。そこに、ひねりを利かせた洒落たプロットの妙を感じました。

 登場人物ではこの人、探偵に強い憧れを抱いているハンペーのキャラがよかったですね。型にはまった調査をしていく紺屋に対して、無鉄砲で出たとこ勝負みたいな調査をしていく割にきちっと結果を出すハンペー。小気味がいいっていうかな、痛快な気分になりました。「俺って、しっかり、探偵してるぜい」みたいな満足感にハンペーが浸るところなんか、思わずくすりとさせられたりして。

 『インシテミル』『ボトルネック』、そして本作品と読んできて、この作家のミステリは面白いなあと。眠っていた脳の回路が活性化されるみたいな。すっきりとして読みやすく、趣向を凝らした作品の妙味。注目していきたいミステリ作家のひとりになりました。
“自衛”のための「弱き者の砦」
とある事情のため、職を辞した25歳の青年・紺屋長一郎が
犬専門(!)の調査事務所〈紺屋S&R〉を開き、再起をはかろうとする物語。
(ちなみに〈S&R〉とは〈サーチ&レスキュー〉のことです。)


著者の作品としては、はじめて成人が主人公を務めます。

人物造形や設定、文体は樋口有介氏の諸作を彷彿と
させますが、よりドライで現代的な雰囲気です。


本作において大きなテーマとなるのは、ネットという
環境下で増幅され、連鎖していく人の悪意です。

現代においては、第三者であったつもりが、いつのまにか
当事者にされ、理不尽な暴力にさらされる可能性がある――
という現実の酷薄さに、今更ながら戦慄をおぼえさせられます。


もっとも、何事にも「闇」があれば「光」もあり。

本作では、ネットの「善」の象徴として、紺屋のチャット仲間・GENが登場します。
紺屋にとってGENは直接の面識こそないものの、あらゆる相談に親身に応じてくれる存在。
そもそも紺屋S&Rも、彼(彼女?)のアドバイスをきっかけにはじめたものです。

こうしたGENの人物造形は、著者の〈古典部〉シリーズに登場する折木供恵と通底
しており、作中に直接姿は見せないけれども極めて重大な示唆をもたらす存在
――いわば〈彼岸の人〉として形象化されているといえるでしょう。


本作はシリーズもので、続刊も予定されていますが、上記の事情から、
今後GENが作中に姿をあらわす可能性はほとんどないといえます。

しかし私としては、実は紺屋とGENが過去に面識があって……という展開も
おもしろいかなあ、などと妄想を逞しくしてみたりもしていますw


ともあれ、シリーズ第2作『流されないで(仮)』の刊行が待ち遠しいです。

ラストの展開に言いようのない恐怖が・・。
犬探し専門ではじめた探偵のもとに「失踪人の捜索」と「古文書の解読」の依頼が。最初はあまりやる気ではなかったが、弟子入り(?)してきたハンペーとともに分担して仕事をするうち、二つの事件は奇妙にリンクし始めて・・・。

だがこの二人、お互いにお互いの事件をほとんど報告しないため、リンクしている事に気づいていないところが面白い。軽快なタッチで書かれているためスラスラ読めるが、後半は前半の陽気さというか脱力感が一変する。ネタバレになるので書けないが、前半のなんでもないように書かれている些細なことが、後半で一気に繋がっていく。全く無駄のない前半の伏線の張り方に脱帽です。

ラストは下手なホラーよりもかなり怖い。どういう風に怖いかはぜひ読んで確かめてほしいですね。

ご都合主義が引っかかる
05年07月刊行の単行本を文庫化した作品です.

青春ミステリなど,学生をメインにした作品の目立つ著者ですが,
本作の主人公は25歳.ややハードボイルド調なのが印象に残ります.

物語は,ふたつの事件をこの青年と助手の若者が調べるのですが,
それぞれ別々に進み,こまめな視点や場面の切り替えが特徴的です.

ただ,いつもは若者っぽい(?)軽い感じのやり取りの目立つ助手が,
彼のパートに移った途端,急に大人びてしまうのに違和感を感じますし,
ほかにも,必要とは思えない冗長な表現や説明が多いのも引っかかります.

また,チャットを使って見えない相手と事件の推理などを交わすのは,
著者のほかの作品でも見られるのですが,少しずるいかなという印象で,
ピースが続々とはまっていく終盤ともあわせ,ご都合主義に感じられます.

そのため,いわゆる『どんでん返し』とも言える事件の真相についても,
どこか傍観者のような,外から読まされている感が抜けないのが残念です.



本のみちしるべ Powered by Amazon Web Service
PR: FS研究室