「レベッカ」の作者だという事は知っていましたが、
短編にもここまでのストーリーテラー振りを
発揮している人だとは知りませんでした。
「恋人」には、突然頭を殴られたような衝撃を与えられ、
衝撃度が最高でした。「鳥」は、また映画の方とは違う
恐ろしさを感じさせます。もう物語最初の頃の窓の
描写で、すでにぞっとさせてくれます。
「林檎の木」は、不気味な話でありながらも、
嫌っている林檎の木に対する男の反応が、
どこかユーモラスでさえもあります。
「写真家」は、予想がついてしまうような展開で、
いまいちでした。
「動機」は一番後味が悪く、哀切さを感じさせる話です。
デュ・モーリアの短編では他に「破局」と「真夜中すぎでなく」が
邦訳されているようですが、「真夜中すぎでなく」も絶版になって
しまっているようで残念です。絶版になってしまった「真夜中すぎでなく」の復刊や、
彼女の他の短編の邦訳も希望します。
鳥―デュ・モーリア傑作集 (創元推理文庫)
ダフネ デュ・モーリア/Daphne du Maurier/務台 夏子
価格: ¥1,050 (税込) 文庫 出版社: 東京創元社 発売日: 2000/11 ISBN: 4488206026 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 100297位 発送可能時期: 在庫あり。 ![]() |
著者のデュ・モーリアは、英国でも再評価されつつある作家ですが、この短編集を読み、その理由がある程度理解できた気がします。
物語の構成や登場人物たちの描写など、緻密で緊張感のある文章により、一種独特な世界に引き込まれるような魅力があります。
どれもがハッピー・エンドとはいかない、ほろ苦い話ばかりですが、積み重ねられた心理描写や人々の行動からは、リアルな人間模様だけではなく、 (世界を裏側からのぞくような) 不思議な情景が浮かび上がってきます。
映画館で知りあった、どこか謎めいた彼女との会話のやりとりがおもしろい 「恋人」 。
鳥の襲来に淡々と対処する主人公を描きだす 「鳥」 。
美しい夫人の気まぐれが、退屈なバカンスを一変させてしまう 「写真家」 。
とほうもない精神世界の深淵をかいま見せる、不可思議な体験談 「モンテ・ヴェリタ」 。
屋敷の貧弱なリンゴの木が、次第にその存在感を増すようになる 「林檎の木」 。
1つの謎が、隠された人間模様を次々と浮き彫りにしていく 「動機」 。
ゴシック,スリラー,サスペンス,ミステリー,ロマン,心理小説など、バラエティに富んだ作品集。
どれもが、小説を読むという体験を満足させてくれる、良質な短編ばかりです。
この短編集のテイストに近い作品集では、ウィルキー・コリンズ 「夢の女・恐怖のベッド」 のほか、 「ヘンリー・ジェイムズ短篇集」 などが思い浮かびました。
物語の構成や登場人物たちの描写など、緻密で緊張感のある文章により、一種独特な世界に引き込まれるような魅力があります。
どれもがハッピー・エンドとはいかない、ほろ苦い話ばかりですが、積み重ねられた心理描写や人々の行動からは、リアルな人間模様だけではなく、 (世界を裏側からのぞくような) 不思議な情景が浮かび上がってきます。
映画館で知りあった、どこか謎めいた彼女との会話のやりとりがおもしろい 「恋人」 。
鳥の襲来に淡々と対処する主人公を描きだす 「鳥」 。
美しい夫人の気まぐれが、退屈なバカンスを一変させてしまう 「写真家」 。
とほうもない精神世界の深淵をかいま見せる、不可思議な体験談 「モンテ・ヴェリタ」 。
屋敷の貧弱なリンゴの木が、次第にその存在感を増すようになる 「林檎の木」 。
1つの謎が、隠された人間模様を次々と浮き彫りにしていく 「動機」 。
ゴシック,スリラー,サスペンス,ミステリー,ロマン,心理小説など、バラエティに富んだ作品集。
どれもが、小説を読むという体験を満足させてくれる、良質な短編ばかりです。
この短編集のテイストに近い作品集では、ウィルキー・コリンズ 「夢の女・恐怖のベッド」 のほか、 「ヘンリー・ジェイムズ短篇集」 などが思い浮かびました。
今はもう映画をあまり観ないのだが、学生の頃はヒッチコックの映画は何度も繰り返し観ていた。深夜テレビでやっていたヒッチコック劇場も観ていた。だけど、誰が脚本だとか原作が誰かということにあまり興味がなく、ただ、ヒッチコックの作品ということで観ていた。
さらに、翻訳小説も、あの独特の比喩や言い回しが苦手なので、めったに読まない。読めばおもしろいのは分かっているのだが、なかなか手が出ない。
だから、映画の「鳥」に原作があり、しかも「レベッカ」の原作者と同じということを最近まで知らなかった。この本も書店で偶然見つけて購入した。
ここに収められているどの短篇もそうだが、文章が読みやすい。翻訳もいいのかもしれないが、端正で簡潔な文章だ。だからといって紋切り型ではない。海外作家の小説でこういった文章は初めてに近かった。内容も短篇らしい。本当はもっと情報量を詰め込むことができるのに、それ削ぎ落として物語に必要なことだけが綴られている。
「鳥」もそうだ。描かれているのは一つの家族の姿だけだ。家族の住んでいる町の様子も殆んど描かれていない。本当はイギリス中がパニックに陥っているのだが、それはラジオを通じて僅かに断片的に伝えられるだけである。しかも、そのラジオ放送自体も中断されてしまう。「鳥」で描かれている「事柄」は、断片的(言い換えれば局地的)な事柄だ。町や国がどうなっているかは書かれていない。結末すらも書かれていない。しかし、それが、かえって恐ろしさを際立たせている。想像する恐怖あるいは見えない恐怖と言えばいいのだろうか。
デュ・モーリアの作品はこれが初めてだが、映画の「レベッカ」にもレベッカ本人が登場しないことを考えると、彼女は書かないことによって作品に奥行きを持たせることに成功した作家のような気がする。
いずれ「レベッカ」も読んでみようと思った。
さらに、翻訳小説も、あの独特の比喩や言い回しが苦手なので、めったに読まない。読めばおもしろいのは分かっているのだが、なかなか手が出ない。
だから、映画の「鳥」に原作があり、しかも「レベッカ」の原作者と同じということを最近まで知らなかった。この本も書店で偶然見つけて購入した。
ここに収められているどの短篇もそうだが、文章が読みやすい。翻訳もいいのかもしれないが、端正で簡潔な文章だ。だからといって紋切り型ではない。海外作家の小説でこういった文章は初めてに近かった。内容も短篇らしい。本当はもっと情報量を詰め込むことができるのに、それ削ぎ落として物語に必要なことだけが綴られている。
「鳥」もそうだ。描かれているのは一つの家族の姿だけだ。家族の住んでいる町の様子も殆んど描かれていない。本当はイギリス中がパニックに陥っているのだが、それはラジオを通じて僅かに断片的に伝えられるだけである。しかも、そのラジオ放送自体も中断されてしまう。「鳥」で描かれている「事柄」は、断片的(言い換えれば局地的)な事柄だ。町や国がどうなっているかは書かれていない。結末すらも書かれていない。しかし、それが、かえって恐ろしさを際立たせている。想像する恐怖あるいは見えない恐怖と言えばいいのだろうか。
デュ・モーリアの作品はこれが初めてだが、映画の「レベッカ」にもレベッカ本人が登場しないことを考えると、彼女は書かないことによって作品に奥行きを持たせることに成功した作家のような気がする。
いずれ「レベッカ」も読んでみようと思った。
『レベッカ』と同様アルフレッド・ヒッチコックによって映画化された『鳥』を中心とする短編集です。創元推理文庫が彼女の作品を刊行するのはこれが初めてですが、彼女の作品を全作読んでみたいと思わせる絶妙の1作目となりました。見事な様々なタイプの作品が並んでいますが、どの作品も謎に対する明確な回答を避けて、読者に想像させるような手法をとっていることが印象的で、一般的な推理小説の手法とは大きく印象が異なります。
ヒロインの孤独感や夜の描写がウィリアム・アイリッシュの作品を想起させる『恋人』(原題ではこれが表題作)、“タイムトラベル・ホラー”とでも呼ぶべき分野を開拓した『裂けた時間』、幸せの絶頂にある女性の自殺の原因を夫に雇われた探偵が究明していく『動機』などが特に気に入りました。『レベッカ』と『鳥』(本書のことではなく、本書の収録作である短編のこと)だけで語られるのは惜しい作家です。
バラエティの楽しめる作品集だ。
収められている8編には今となっては良く知られているプロットの作品もあるのだが、一人称の心理描写や情景描写が優れていることと、ホラーやサスペンスさらにファンタジーやSF作品もあったりして厭きさせない。一編毎に感心しながら、あっという間に読み切った。それは「ヒッチコックの映画『鳥』の原作も含みます」と言い添えておけば充分なぐらい各作品のレベルが高いと言うことだと思う。
この作者への興味が非常に増してきて、嬉しい収穫という気持ち。
収められている8編には今となっては良く知られているプロットの作品もあるのだが、一人称の心理描写や情景描写が優れていることと、ホラーやサスペンスさらにファンタジーやSF作品もあったりして厭きさせない。一編毎に感心しながら、あっという間に読み切った。それは「ヒッチコックの映画『鳥』の原作も含みます」と言い添えておけば充分なぐらい各作品のレベルが高いと言うことだと思う。
この作者への興味が非常に増してきて、嬉しい収穫という気持ち。



