シャベール大佐 (創元ライブラリ―バルザック選集)
オノレ・ド バルザック/Honor´e de Balzac/川口 篤/石井 晴一
価格: ¥612 (税込) 文庫 出版社: 東京創元社 発売日: 1995/09 ISBN: 4488070019 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 373130位 発送可能時期: 通常24時間以内に発送 ![]() |
法律家デルヴィルの事務所に、ある老人が現れた。彼は頭の傷を見せ「我こそはアイラウの戦いの英雄にして皇帝ナポレオンの忠実な僕たるシャベール大佐だ」と訴える。デルヴィルは彼の境遇に同情して、既に別の男と再婚している元妻に掛け合ったりして、この老人を救う努力をするが、結局実らなかった。孤児院で生まれた「英雄」は、養老院で死を迎えることになる。この社会的不条理にデルヴィルは嘆息する。バルザックは、若いころ法律事務所で見習いをしていたことがあり、そこの代証人ギョネ・メルヴィルは清廉潔白な人物として評判で『人間喜劇』の各作品に登場するこの法律家デルヴィルのモデルだといわれている。本作は文豪が若いころの体験を、どのように作品化していくかがよく分かる好例である。
死亡届が出され、社会と世間から抹殺されたシャベール大佐が、実は生きていた。社会的地位、財産、そして妻をも失った彼が、それら全てを取り戻そうと公証人デルヴィルに依頼する。
この物語はシャベール大佐の物語であると同時に、人間喜劇中で活躍する『実直な公証人』デルヴィルをめぐる法曹界の物語でもある。
この物語はシャベール大佐の物語であると同時に、人間喜劇中で活躍する『実直な公証人』デルヴィルをめぐる法曹界の物語でもある。
やや単調で説明的な冒頭部の長さに対して、クライマックスのあまりの短さ、あっけなさが気になるが、それもバルザックの醍醐味だろう。
この物語の読後に残るのは、社会の表層を占める名誉や金に対する虚しさと、人間の内面を彩る愛情の偉大さである。そして、しばしば、いやほとんどの場合、この両者のうち勝利を収めるのは前者なのである。


