ミステリのジャンルとしては「日常の謎」。
三つの中篇に、二つの番外編的な短篇をはさむ構成の連作集です。
本作に対する私の印象を一言でいえば、
「妻子持ち男の優雅な引きこもり生活」
です。
時折、さざ波は立つものの、基本的には生活の生臭さと絶縁した家庭の
なかで少し浮世離れしたペダンチックな父娘のやり取りが展開されます。
幼い娘を抱え、夫婦共働きでパンク寸前の生活を送っていた八駒家。
最終的に、夫の敬典が会社を退職し、主夫
(彼は「家主」と自称)になる道を選びます。
表面的には、敬典が家族のために犠牲になった
形ですが、本当の所はどうなのでしょうか。
彼は有能な会社員だったようですが、特に仕事に未練はなく、
むしろ、家事の合間に読書や花壇の整備などの文化的な営みを
することに生きがいを見出しているようです。
娘のつばめからも、敬典が幸せなのは、歴史や人間の話
をしている時なのでは、とズバリ指摘されてもいます。
世間のしがらみから解放され、楽になったのは父のほうではないか?
自分たち家族はダシにされただけなのではないか?
上記のような考えをつばめが抱いて
いるかどうかは明らかではありません。
ただ、敬典によって示される推測は、少々
自分に都合が良すぎるような気がしました。
さて、本作を純粋にミステリとして見た場合は、
“花言葉”の暗号解読トリックが秀逸な「お花当番」が出色。
著者は当初、中世から花言葉があると思い、作品の
青写真を仕上げていたそうですが、後に誤りだと判明。
そこで逆に、その誤りを活用する形で
プロットを作り直し、完成させたそうです。
結果的に、ストーリーとキャラ、
両方に奥行きと味が出たと思います。
人形の部屋 (ミステリ・フロンティア)
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前作「天才たちの値段」は、薀蓄と謎解き中心の話だった。それなりに面白かったのだが、主人公があまりにも手際よくご都合主義が気になるところもあった。そこで星は4つにした。ここに収められた5つの作品では謎解き自体は、前作より後退しているかもしれないが、登場人物に人としての広がりがあり、物語を豊かにしている。1作目は前作に引き続き薀蓄中心の話だが、主人公には先輩を思いやる余裕がある。2作目の初老の紳士は、先代から勤める会社に愛着を持ち、対する若社長も・・・。特に3作目の大学時代年上の後輩だった女性との微妙な関係はなんとも切ない。ラストの数行で救われた。5作目の父娘間のやり取りは同世代の娘を持つ私としてはなんともいえないリアリティがある。ところで、4作目の若者に対する意見は作者と異なる。芸術家としては無理でも、経済的には、したたかにやっていくかもしれないなと思ってしまった。創作なのに作者と異なる結論に達するのは人物が良く描けているからだと思う。
ところで、2作目の展開には1本とられてしまった。ディテールにこだわる主人公が・・・するはずないのに。世界史に精通していれば一敗地にまみれることもなかったのに悔しい。それにしても話の展開が巧みで、ミステリとして秀逸なのはこの作品だと思う。
「天才たちの値段」の続編も読みたいが、この続編もぜひ読みたい。作品のなかでの娘さんの成長が早いので、続編は無理かなと、ちょっと危惧している。薀蓄やどんでん返しだけの小説は読みたくない。広がりのある世界を紡げる作家は少ない。次回作にはすごく期待している。
ところで、2作目の展開には1本とられてしまった。ディテールにこだわる主人公が・・・するはずないのに。世界史に精通していれば一敗地にまみれることもなかったのに悔しい。それにしても話の展開が巧みで、ミステリとして秀逸なのはこの作品だと思う。
「天才たちの値段」の続編も読みたいが、この続編もぜひ読みたい。作品のなかでの娘さんの成長が早いので、続編は無理かなと、ちょっと危惧している。薀蓄やどんでん返しだけの小説は読みたくない。広がりのある世界を紡げる作家は少ない。次回作にはすごく期待している。
わざと縛りを効かせた設定、専業主夫(男で家にいる)娘1人、奥さんは働きに・・
”知的”好奇心が強い、「博識」(偉そうということではなく)な主夫が、”こそっと”謎に挑む。
たとえ事件(人が死ぬなど)でなくても、小さな「何故」も、解き明かされ「なるほど」となれば、ミステリー。
これは、結構むずかしいもので、殺人、失踪、国家機密とは対称的な小さな世界の話なので、荒っぽい、勢いに任せては壊れてしまう。
作者は、前作『天才たちの値段』から、引き続き、綿密な構成力で、作品を成立させている。前作より、読みやすい。
読者が既に、持っている知識だけで、解決することはなく、例えば、その商品の歴史であるとか価値についての情報を、文章のなかで読者にさりげなく教示しながら、ストーリーは進んでいく。そのマニアックさ、この作品の魅力になっている。
決して、パワーで、押し切るタイプの作家ではない、丁寧な作りに好感が持てる小作品集になっている。
職人気質が好き、ディテール好き、知的なことが好きで、ちょっとほっとしたい方には、お薦めします。
蛇足だが・・
この話の娘”つばめ”はいい感じに、多感な少女の好奇心を発揮しているのだが、最初の作品の冒頭で丁度13歳になったばかりの設定、実は、昨日うちの娘も丁度13歳(11/7)になったので偶然の一致にちょっとびっくり。でも、うちの娘はボーっとしたタイプなので、つばめのようなタイプなら父親も気をつかうだろうな−という思いに・・
”知的”好奇心が強い、「博識」(偉そうということではなく)な主夫が、”こそっと”謎に挑む。
たとえ事件(人が死ぬなど)でなくても、小さな「何故」も、解き明かされ「なるほど」となれば、ミステリー。
これは、結構むずかしいもので、殺人、失踪、国家機密とは対称的な小さな世界の話なので、荒っぽい、勢いに任せては壊れてしまう。
作者は、前作『天才たちの値段』から、引き続き、綿密な構成力で、作品を成立させている。前作より、読みやすい。
読者が既に、持っている知識だけで、解決することはなく、例えば、その商品の歴史であるとか価値についての情報を、文章のなかで読者にさりげなく教示しながら、ストーリーは進んでいく。そのマニアックさ、この作品の魅力になっている。
決して、パワーで、押し切るタイプの作家ではない、丁寧な作りに好感が持てる小作品集になっている。
職人気質が好き、ディテール好き、知的なことが好きで、ちょっとほっとしたい方には、お薦めします。
蛇足だが・・
この話の娘”つばめ”はいい感じに、多感な少女の好奇心を発揮しているのだが、最初の作品の冒頭で丁度13歳になったばかりの設定、実は、昨日うちの娘も丁度13歳(11/7)になったので偶然の一致にちょっとびっくり。でも、うちの娘はボーっとしたタイプなので、つばめのようなタイプなら父親も気をつかうだろうな−という思いに・・



