福家警部補の挨拶 (創元クライム・クラブ)
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知人の勧めで手に取りました。上品で荒唐無稽でなく、安心して読めました。次作が楽しみです。TVドラマ化に向いているように思います。脳内キャスティングでは福家警部補は永作博美さんです。
髪はショートで、縁なし眼鏡がトレードマーク。
チビで童顔のため、現場ではいつも刑事として
見てもらえないが、実は三十オーバーの模様。
これが本書の探偵役・福家警部補(下の名は出てこない)です。
一見頼りない彼女ですが、連日の徹夜をものともしないタフさと、
鋭い観察力・洞察力で事件の真相を暴いていく、『コロンボ』や
『古畑』に連なる〈倒叙ミステリ〉の正統なる継承者です。
コロンボや古畑との最大の相違点は、彼女が女性であるということ。
そのため、実はオヤジ受けがよかったり、同僚からも風変わりだけど
そこがまた…、などと思われているようです。
また、事件関係者に対する心くばりの細やかさも女性ならではで、
それは犯人に対しても例外ではありません。
このあたり、コロンボや古畑がどこか非情であったのとは
一線を画しており、彼女の得がたい個性となっています。
映像化の可能性も十分あると思うのですが、
なかなか警部補に適任の女優が思いつきません。
(強いてあげるなら、深津絵里かな…)
あるいはまんがやアニメのほうが、作品の持つ魅力を
引き出しやすいかもしれないです。
チビで童顔のため、現場ではいつも刑事として
見てもらえないが、実は三十オーバーの模様。
これが本書の探偵役・福家警部補(下の名は出てこない)です。
一見頼りない彼女ですが、連日の徹夜をものともしないタフさと、
鋭い観察力・洞察力で事件の真相を暴いていく、『コロンボ』や
『古畑』に連なる〈倒叙ミステリ〉の正統なる継承者です。
コロンボや古畑との最大の相違点は、彼女が女性であるということ。
そのため、実はオヤジ受けがよかったり、同僚からも風変わりだけど
そこがまた…、などと思われているようです。
また、事件関係者に対する心くばりの細やかさも女性ならではで、
それは犯人に対しても例外ではありません。
このあたり、コロンボや古畑がどこか非情であったのとは
一線を画しており、彼女の得がたい個性となっています。
映像化の可能性も十分あると思うのですが、
なかなか警部補に適任の女優が思いつきません。
(強いてあげるなら、深津絵里かな…)
あるいはまんがやアニメのほうが、作品の持つ魅力を
引き出しやすいかもしれないです。
本書の最大の魅力は、表面的に『コロンボ』を真似するのではなく、その核にあった“ミステリーの古典への敬意とそれを継ごうとするスピリット”を、さらに継ごうとしている点にあります。以下、思いついた点をまとめてみました。
★キャラに頼らない
意外かもしれませんが、第1シーズンの『刑事コロンボ』では、コロンボ警部は、愛嬌はあるものの、「得体の知れない謎の刑事」で、その描写も多くはなく、ミステリー中心の作風でした。『福家』は、フォークの魅力で人気の出た後年のコロンボではなく、初期のストイックなところからはじめています。これが『古畑』と違うところであり、かなりのリスクを背負った英断だと思います。
★手がかりの密度
『コロンボ』といえば、解決部分の鮮やかさだけが取り上げられがちですが、本当のすごさは、途中に置かれた手がかりの量と質にあるように思います。『福家』は、1作50ページほどの中に、10以上、多いときは20近い伏線や手がかりを詰め込むことで、『コロンボ』を見ているときのあのわくわく感を再現しています。
★適度に高度なミステリ
『福家』の謎解きは、天地がひっくり返るようなものではなく、論理的に筋の通ったところに落ち着きます。伏線の張り方も実にフェアなので、ミステリーが好きな方でしたら4作中1〜2作は主人公より先に解決できるのではないでしょうか。だからといってつまらないことはなく、実は、これこそが本来の「本格」の姿だったようにも思います。マニア向けではない、誰にでも気軽に楽しめる「明快な面白さ」も、作者はちゃんと「コロンボ」から継承しています。
★「倒叙」の意味
上記の項目にもつながるのですが、作者は「倒叙」を、最も純粋でフェアな「本格ミステリーを盛り込む器」として120%活用しています。「倒叙」は、心理描写を膨らませれば読者をエモーショナルに引っ張れますが、それはあえて避けているようです。近年、これほど「ミステリー以外の要素がまったく入っていない」、純粋なパズラーはなかったのではないでしょうか。それ以上にすごいのは、通常の犯人当てミステリーでは、文中に楽に隠せる手がかりが、フォーマットの決まった「倒叙」の場合、犯行の描写を読む読者は、「これが手がかりになるのでは?」と鵜の目鷹の目で読むため、手がかりの配置が何倍も難しくなるという点です。それをとりあえず4作(10月の「ミステリーズ!」に新作が載るそうです)、成立させているのは驚きという他ありません。
★キャラに頼らない
意外かもしれませんが、第1シーズンの『刑事コロンボ』では、コロンボ警部は、愛嬌はあるものの、「得体の知れない謎の刑事」で、その描写も多くはなく、ミステリー中心の作風でした。『福家』は、フォークの魅力で人気の出た後年のコロンボではなく、初期のストイックなところからはじめています。これが『古畑』と違うところであり、かなりのリスクを背負った英断だと思います。
★手がかりの密度
『コロンボ』といえば、解決部分の鮮やかさだけが取り上げられがちですが、本当のすごさは、途中に置かれた手がかりの量と質にあるように思います。『福家』は、1作50ページほどの中に、10以上、多いときは20近い伏線や手がかりを詰め込むことで、『コロンボ』を見ているときのあのわくわく感を再現しています。
★適度に高度なミステリ
『福家』の謎解きは、天地がひっくり返るようなものではなく、論理的に筋の通ったところに落ち着きます。伏線の張り方も実にフェアなので、ミステリーが好きな方でしたら4作中1〜2作は主人公より先に解決できるのではないでしょうか。だからといってつまらないことはなく、実は、これこそが本来の「本格」の姿だったようにも思います。マニア向けではない、誰にでも気軽に楽しめる「明快な面白さ」も、作者はちゃんと「コロンボ」から継承しています。
★「倒叙」の意味
上記の項目にもつながるのですが、作者は「倒叙」を、最も純粋でフェアな「本格ミステリーを盛り込む器」として120%活用しています。「倒叙」は、心理描写を膨らませれば読者をエモーショナルに引っ張れますが、それはあえて避けているようです。近年、これほど「ミステリー以外の要素がまったく入っていない」、純粋なパズラーはなかったのではないでしょうか。それ以上にすごいのは、通常の犯人当てミステリーでは、文中に楽に隠せる手がかりが、フォーマットの決まった「倒叙」の場合、犯行の描写を読む読者は、「これが手がかりになるのでは?」と鵜の目鷹の目で読むため、手がかりの配置が何倍も難しくなるという点です。それをとりあえず4作(10月の「ミステリーズ!」に新作が載るそうです)、成立させているのは驚きという他ありません。
確かにコロンボをこよなく愛する作者によるものですが、全く知らなくても必ず楽しめるでしょう。描写が映像を彷彿としてイメージしやすく、主人公が非常に魅力的。謎解きも論理的で犯人に対して警部補が敬意をもって接する所も、キャラクタの持つ雰囲気と調和して気持ち良いです。
個人的には、忘却の彼方にいたコロンボがよみがえる所が度々あり、不思議な読後感でした。
個人的には、忘却の彼方にいたコロンボがよみがえる所が度々あり、不思議な読後感でした。
新シリーズに比べ、コミカルだが容赦ない、シャープな「旧」コロンボ。
その世界観を愛するファンにとって本書は、新シリーズや古畑任三郎に求めることができない、旧の乾いた斬れ味を体験することができます。
本家とのつながりも楽しく、一歩一歩追い詰められていく犯人にいつのまにか感情移入してしまう流れも鮮やか。
帯の「コロンボ、古畑の系譜」に偽りなしと言ってもいいでしょう。
ただ、短いのは本当にあっという間に終わってしまう感があるので、このシリーズは「オッカムの剃刀」くらいの長さがちょうどいいのでは?
このクオリティでいければ、続編も楽しみです。
その世界観を愛するファンにとって本書は、新シリーズや古畑任三郎に求めることができない、旧の乾いた斬れ味を体験することができます。
本家とのつながりも楽しく、一歩一歩追い詰められていく犯人にいつのまにか感情移入してしまう流れも鮮やか。
帯の「コロンボ、古畑の系譜」に偽りなしと言ってもいいでしょう。
ただ、短いのは本当にあっという間に終わってしまう感があるので、このシリーズは「オッカムの剃刀」くらいの長さがちょうどいいのでは?
このクオリティでいければ、続編も楽しみです。



