元ネタはいくつかあるそうだが、その一つが乱歩の「幽霊搭」であり、更に黒岩涙香の同名小説が元ネタであるという。その「幽霊搭」が収録されている。
更に更に、これは涙香のオリジナルではなくイギリスの小説を翻案した作品。翻案と言うのは翻訳と違って、非常に日本っぽくした文章である。
――道理で変だと思った。
なんせ舞台がイギリスで、倫敦の地名が出てくるのに、登場人物のほとんどが日本名なんである。うっかり途中までは日本が舞台だと思っていて、こいつらわざわざ倫敦と日本を行ったりきたりしているのか、この時代に! とびっくりしてしまった。その後も時折、日本の話だと思って読んでいた。
おまけに文章に句点が少なく、読点ですませてしまっているので、読みづらいことこの上ない。もっともそれは当時の主流だったのかもしれないが、慣れた頃には終わり間近だった。
「カリ城」の元ネタだと知らなかったら、読み終えなかったに違いない。
主人公の伯父が手に入れた“幽霊搭”には古くから宝の伝説があり、殺人事件も起きている。そこに謎の美女が現れ、主人公は彼女に惹かれる。しかし、次から次へ事件が起きる――。
宝とは何か。美女は何者か。かつて起きた殺人事件の真相は?
という話だが、乱歩の方と読み比べてみるのも一興だろう。
ところで、「あれから四年…クラリス回想」に集録されたインタビューでは、元々の原作者(イギリスの作家)について分かっていないようなことを宮崎監督が述べているが、近年それが判明したらしい。
どうも原作を読んだ読者がネタバレしないように隠していたら、本当に分からなくなってしまった、ということのようだ。
時代を感じるエピソードである。
明治探偵冒険小説集 (1) 黒岩涙香集 ちくま文庫―明治探偵冒険小説集
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