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教育改革の幻想 (ちくま新書)
苅谷 剛彦
価格: ¥735 (税込)

新書
出版社: 筑摩書房
発売日: 2002/01
ISBN: 4480059296
おすすめ度:4.0
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論理的で説得力のある良書
(1) 学力低下論争のあおりを受けて軌道修正を余儀なくされた「ゆとり教育」であるが、そのゆとり教育を2002年1月出版の時点で「教育改革の幻想」と見通した本。

(2) 本書で主張されている主な事項は次のとおり。
 ○ そもそも、ゆとり教育の前提となっている「過度の受験競争」は存在しない。
 ○ ゆとり教育によって、家庭での学習時間は減少している。学力の低下もみられる。
 ○ ゆとり教育は、正しい現状分析を行ったうえで実施されたものではない。
 ○ 「総合的な学習の時間」のように、子供の自主性に委ねる授業は必ずしも有効な授業法ではない。

(3) 「子供の自発性に委ねなければ真の教育効果はあらわれない」というような論調が多い中で、このような考え方が現実的でないことを、日本の教育の変遷、アメリカとの比較など様々な観点から論証している。全体を通じて、データを客観的かつありのままに分析し、理詰めで論理展開しており、説得力がある。

(4) 「ゆとり教育」賛成・反対にかかわらず、昨今の教育論争を正しく理解するためにぜひ読んでおくべき本だと思います。
ゆとり教育がいかに非合理的な政策であったかを検証、信頼性は高い
1989年と2001年の全国学力試験データをまとめた調査報告を作成した苅谷剛彦氏の著書。ゆとり教育が推奨された根拠となるデータを紹介し、その解釈が不適切であることによって政策自体が失敗であった可能性を言及している。約200ページではあるが、多数のデータが紹介されたじっくり読むべき書。

内容を見ると、著者の検証データは紹介されていないものも含めると膨大であり、きわめて時間をかけて検証されている。最近の教育論者の書には、主観的な意見が中心のものが多い中、本書は基本的な統計データを素直に解釈した根拠をもとに主張を述べている。学習に関するデータの信憑性を疑問視する意見があるからといって、それを否定しイメージだけで政策を決定するのでは、オカルト信仰や予言を信じるのと大差ない。本書での指摘を例に挙げると、ゆとり教育の目的が『全員が理解できる教育』としているのであれば、到達目標を下げるのはまだ理解できるとして、教育時間まで減少させるのでは本末転倒であることは素人にもわかりそうなことだ。また、もともと勉強しない子供が週休2日で増えた休日に自主的に勉強するわけないことくらい想像できない方がおかしい。脳科学分野からみても、九九などの知識記憶は幼少時のほうが圧倒的に覚えやすいことなどが判明しているし、将来必要な問題解決能力である『知恵』は『知識』をどう操るかで、『知識』の量に依存することは自明である。数学0点で東大文系に合格できること自体受験が目的化している証拠だが、統計も学んでいない者がまともな政策決定などできるわけないと思う。

本書には著者が書ききれない行間が多数存在していると思う。表やグラフをじっくり読んで、自分の意見を持って本文を読むことを勧める。著者の努力と現時点で最も説得力ある根拠を示し、それを普通に解釈していることから、推奨度は高い。同氏の他の著書からも信頼性は高い。
教育改革の本質は別のところにある
 日本では、1980年半ばの臨時教育審議会以降、教育改革が論じられ、実施が努められてきた。しかし、著者は、その効果が上がらないどころか弊害さえ出てきていると認識し、問題設定と課題解決の仕方自体の中に誤りがあると指摘している。著者の認識は、データで確認する作業に基づいた説得性があり、問いには本質を見抜く視点があると思います。
 「教育改革」とは、単純に言えば、いやがる子供たちに無理やり知識を詰め込んできたから色々な問題が生じてきたのだから、これからは自主的に学ぶ意欲を持つような教育にしていかなければならない、ということなのでしょう。しかし、著者が別の人の言葉の引用として指摘している次の文に、実はことの本質が含まれているように思えます。「大人の困難を子供たちに肩代わりしてもらおうとしても、そううまくゆくはずはない。」
ゆとり教育という幻想
 「受検競争が・・・」だからゆとりが必要という前提そのものが間違いで、ゆとり教育の必要性は、実はこうしたミスリードから出てきたものであるという視点はまさに目からウロコ。
 ゆとり教育の実態は、下層家庭の子どもたちから学びを奪うことであり、それによって、学力中上位の子のみが恩恵を受けるという、まさに階層固定化という憂うべき事態を招く事につながる。
 公教育の役割、公立学校のあり方について、一石を投じる。
実りある改革のために
「ゆとり」から「言葉の力」へ,先日,次の指導要領の改訂の方向性が示されました。教育は国家100年の大計と言われていますが,このところの教育に関する政策を見ていると,あまりにも場当たり的で,見通しがないように思われてなりません。2002年1月に出版された本書では,今回の「改革」が誤った事実の認識と,誤った処方箋に基づくものであることを調査に基づいてあぶり出して行きます。そして改革が成果を上げないであろうことが,示されています。改革を実りあるものにするにはしっかりとした現状の認識と見通しを持って,必要なところにきちんと資本を投下することが必要である思わされます。



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