大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す (幻冬舎新書)
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著者の同窓生で、自身も医局からはみ出し気味ですが、それでも普通に公立病院の勤務医をしているものとして、本書の内容はものすごく理解できます。私を含め、まあまあの大学を出て、まあまあの規模の都市圏で働いている普通の勤務医の現在の常識を素のまま、医師以外にわかりやすくまとめた内容です(超有名私立大学とか、ものすごく田舎の町だとかには、別の常識があるかも)。著者の個人的主張は別として、内容に誇張もありませんし、特に歪曲された表現もありません。まずは、これが実態なんですよ、ということを世間に理解してほしいという意図で書かれた本だと思いますし、普通の勤務医は、皆、こういう実態をマスコミを含めた「世間」の人、それから厚生労働省の人(病院を管理している立場の割に、実態についてはまったく無知な方が多いので)に理解してほしいと考えています。他のレビューワーの中に、医師の自由を制限しろという主張がおかしいというコメントがありました。もちろんそれはその通りです。同感です。自分の自由を制限されたくはありません。しかし、この箇所以外はすべて、医師以外の一般市民の方がどう感じようと、事実です。若干偽悪的な表現もあり、イヤな人にはイヤでしょうが、この本を読んだ方は、日本の医療の現実を直視していただきたいと思います。
「おわりに」の冒頭に、「これまでの日本の医療は、曲がりなりにも機能していた。それはわずかな犠牲の上に成り立っていたともいえる。その犠牲をゼロにするために、さまざまな改革が行われ、結果、皮肉にも日本の医療が崩壊に向かいはじめた」(p211)とある。実際、本書はこれを具体的に例示しつつ展開しており、読むに値する内容になっていると思う。書名で食わず嫌いしないほうがいい。
私などはこういう本を読むと、つい一般化して、複雑性を孕んだ制度設計の難しさを示す事例研究として理解してしまいそうになる。しかし当たり前ながら、それでは本書固有の意味が失われてしまうのであって、医療の問題は医療の問題として検討すべきなのだろう。
著者は「(医師にして)作家」の立場から、「(ただの)医師」には口にしにくい本音も代弁し、裏事情も明かしている。おかげで医療の現状はよく理解できた。ただ副作用的に医学の脱=神秘化にも寄与しており、本書を自己利益の最大化のためのマニュアルとして用いれば、医療崩壊を加速してしまう可能性もある…って、私自身、今後医者にかかる時、本書の情報を計算に入れるだろうなァ。
ところで医師不足は産科・小児科・地方だけではない、近い将来に外科医も不足する、と話を振った後、「ある教育病院の外科部長は、新人確保のために、研修医にどんどんメスを握らせると言っていた。メスで人体を切る快感を味わわせ、外科に引き込もうという作戦である」(p180)とある。「そんな理由で研修医に切られる患者はたまったものではない」のも確かだが、私としてはむしろ、外科医が「メスで人体を切る快感」を味わっていたんだ、ヤッパ、という点の方が怖かった。
私などはこういう本を読むと、つい一般化して、複雑性を孕んだ制度設計の難しさを示す事例研究として理解してしまいそうになる。しかし当たり前ながら、それでは本書固有の意味が失われてしまうのであって、医療の問題は医療の問題として検討すべきなのだろう。
著者は「(医師にして)作家」の立場から、「(ただの)医師」には口にしにくい本音も代弁し、裏事情も明かしている。おかげで医療の現状はよく理解できた。ただ副作用的に医学の脱=神秘化にも寄与しており、本書を自己利益の最大化のためのマニュアルとして用いれば、医療崩壊を加速してしまう可能性もある…って、私自身、今後医者にかかる時、本書の情報を計算に入れるだろうなァ。
ところで医師不足は産科・小児科・地方だけではない、近い将来に外科医も不足する、と話を振った後、「ある教育病院の外科部長は、新人確保のために、研修医にどんどんメスを握らせると言っていた。メスで人体を切る快感を味わわせ、外科に引き込もうという作戦である」(p180)とある。「そんな理由で研修医に切られる患者はたまったものではない」のも確かだが、私としてはむしろ、外科医が「メスで人体を切る快感」を味わっていたんだ、ヤッパ、という点の方が怖かった。
大昔に流行った「交番のウラは闇」をもじったようなタイトルでしたので、医学部の告発本かと思いましたが、中身は全く違いました。
「医療は決して完璧な科学ではない。今でもわからないことはたくさんあるし、失敗も多い。」しかしながら、医者の側がこの点を見てみぬふりをした結果、患者側には安全に対する過剰要求が生まれると同時に、それに応えようとする医師の側が疲弊しています。
著者は、医師の側にも問題のあることをわかりながら、毎日過酷な労働条件で疲れている医師を暖かな目で見守っている様子がよく分かります。これが、著者の言っていることに大きな説得力をもたらしています。
そろそろ国民(=患者)の側も医療に対する幻想を捨てるべきだと思いますが、そのためには医師の側も国民に対してしっかりと説明すべきではないでしょうか。
その際には、患者を煙に巻いていた業界全体の体質を反省し、開き直らず、偉ぶらず、事実を淡々と語ることで突破口が開けると思います。そして現場で頑張っている医師の真摯な姿を見てもらえれば、国民も分かってくれると思います。
「医療は決して完璧な科学ではない。今でもわからないことはたくさんあるし、失敗も多い。」しかしながら、医者の側がこの点を見てみぬふりをした結果、患者側には安全に対する過剰要求が生まれると同時に、それに応えようとする医師の側が疲弊しています。
著者は、医師の側にも問題のあることをわかりながら、毎日過酷な労働条件で疲れている医師を暖かな目で見守っている様子がよく分かります。これが、著者の言っていることに大きな説得力をもたらしています。
そろそろ国民(=患者)の側も医療に対する幻想を捨てるべきだと思いますが、そのためには医師の側も国民に対してしっかりと説明すべきではないでしょうか。
その際には、患者を煙に巻いていた業界全体の体質を反省し、開き直らず、偉ぶらず、事実を淡々と語ることで突破口が開けると思います。そして現場で頑張っている医師の真摯な姿を見てもらえれば、国民も分かってくれると思います。
数々の鋭い指摘にもかかわらず、最後の結論部分「外科や内科などの生命にかかわる診療科は成績優秀者だけが選べるようにすべきだ」というところは、まったく見当違いである。そのような診療科が、報酬が高く、人気があるのならともかく、現実は逆なのである。「生命にかかわる診療科」は拘束時間のわりに給与が安く、人気がない。また、本人の希望でない診療科を強要した場合、モチベーションは低下し、ろくな医師になれない。つまり、「成績優秀者を重要な診療科に強制配置」した場合、かえって医療の質は低下してしまう。医師である著者になぜそれがわからないのか不思議で仕方がない。
医療現場や大学病院の問題点が丁寧に書かれている点は評価できます。なぜ、医師不足が起こるのかといった時事のことを理解できます。読む価値はあります。
一方で、本書は医療関係者向けではと思えます。患者が制度の細かい点まで気にするメリットを本書からは感じられません。著者の提言も政治的かつ高度で、患者(一般人)レベルでの近々の対策とは言いがたいでしょう。
事実関係を丁寧に示した点を5点、想定読者の差異を−1点として計4点としました。
一方で、本書は医療関係者向けではと思えます。患者が制度の細かい点まで気にするメリットを本書からは感じられません。著者の提言も政治的かつ高度で、患者(一般人)レベルでの近々の対策とは言いがたいでしょう。
事実関係を丁寧に示した点を5点、想定読者の差異を−1点として計4点としました。



