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幸福の軛 (幻冬舎文庫)
清水 義範
価格: ¥760 (税込)

文庫
出版社: 幻冬舎
発売日: 2005/10
ISBN: 4344407067
おすすめ度:4.0
Amazon ランキング: 447234位
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湿った渇望感
『このガラス細工のような少女を壊さないで欲しい…』

読み始めてすぐに抱いた感想です。でも一方で、この少女は傷つき壊されるために描き出されているに違いないという諦めにも似た気持ちも一緒ににじんできて、後半に近づき少女が登場するたびに、『この場面がそうなのか…』『こいつが壊し役なのか…』と、はらはらしながら読み続けました。

そして結局…。

この少女は重要な脇役ではあるものの、決して主役ではなく、私のような読み方をする人は少ないのかもしれません。でも、背景が繊細に緻密に描かれているからこそ主題が鮮明に浮かび上がってくるような気がします。教育大学出身で読書感想文の功罪などを熱心に説くだけでなく自ら実践する、教育問題の専門家とも言える著者が、あとがきで「決して私の教育論を示すものではありません」と断り書きを入れなければいけないほど、厳しい現実に対する強烈な回答のひとつになっているように思えます。

それは誰もが心の底で感じながらも口には出せないタブー、そしてその沈黙が次の犯罪の隠れた触媒となり、むごたらしい事件が発覚すると、『可哀そうに。でも自分の身に降りかからなくて良かった』と密かに感じる暗いループの繰り返し。

ミステリー小説という観点では、どんでん返しというよりも、これしかないのだろうと思わせる犯人像で、一応の結末は見るものの、残された登場人物のおそらく明るくはないその後を続編で読みたくなるようなお話になっています。読後にこの『湿った渇望感』を感じさせるあたりが著者 清水義範のうまさという気がします。

「カマテンダー」「キャ別」「色々あった。」「家二寸$」などという妙な言葉を聞いて『ニヤッ』と笑うような、パスティーシュ作家 清水義範のマニア読者にはちょっと意外な一面を見せてくれる小説です。



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