かずら野 (幻冬舎文庫)
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乙川作品を初めて読んだ。主人公菊子のめくるめく変転する人生を中心にしつつも、しっとりとした時代の情緒と、とにかくよく働く優しい庶民の姿がすがすがしい。しっかりしている菊子が何でこんな男に翻弄され続けるのか、という歯がゆさを感じつつ読み進めたが、ラストでそれが一気に氷解した。人間と人間、特に夫婦の真の関わりとはこういうことなのであろう。島尾敏雄の「死の棘」のラストを思い出す。ともに、もつれにもつれた絶望的な日々の末に、夫婦の一方だけが、やがて安息の地を見出す。「死の棘」では、それは、精神錯乱の妻の病床であり、「かずら野」では、冷たい夫のなきがらである。人と人は本当に愛し愛され、わかりあう関係などないのかもしれない。ただ、他者への愛の中にいることを発見できた自分自身の存在だけが救いであり、それで十分なのではなかろうか。
この作品に至る乙川の作品を読み続けて来て、こう思っていた。
「いつまでもこういうのばっかり書いていたら、いつか行き詰まるかなあ。でも、いつまでもこの調子で書いていて欲しいんだけどなぁ・・・。」と。
ですが、作家は次のステップに進もうとするものなのでしょうね。それでこそ、プロなのかもしれません。
で、この作品は、彼が新たな方向へ挑んだ作品だという触れ込みでした。だから、僕としては、少しおっかなびっくり読み始めて、・・・。
結果的には、完全な失敗作となりました。
しかし、これも、今後の彼が数々の名作を書き続けて行くには必要な峠なんでしょう。野心的なチャレンジも必要でしょう。それは思うんです。ただ、彼は、今回、それをうまく乗り越えられなかったと言うだけで。
ということで、客観的にこの本を評価するなら、乙川を読むなら他の作品にしてくださいと言わざるを得ない出来でした。
「いつまでもこういうのばっかり書いていたら、いつか行き詰まるかなあ。でも、いつまでもこの調子で書いていて欲しいんだけどなぁ・・・。」と。
ですが、作家は次のステップに進もうとするものなのでしょうね。それでこそ、プロなのかもしれません。
で、この作品は、彼が新たな方向へ挑んだ作品だという触れ込みでした。だから、僕としては、少しおっかなびっくり読み始めて、・・・。
結果的には、完全な失敗作となりました。
しかし、これも、今後の彼が数々の名作を書き続けて行くには必要な峠なんでしょう。野心的なチャレンジも必要でしょう。それは思うんです。ただ、彼は、今回、それをうまく乗り越えられなかったと言うだけで。
ということで、客観的にこの本を評価するなら、乙川を読むなら他の作品にしてくださいと言わざるを得ない出来でした。
あるインタビューで自分の転機となった作品であるようなことを作者自身が語っていた。まさに入魂の一作。妾奉公と知らずに親元を離れて奉公に行く足軽の娘菊子が主人公。予期せぬ方へと次々に主人公に襲いかかる運命。菊子の絶望と涙と共に物語は進んでゆく。関わる人々の仕事や思いやりの温かさ。人間を描きたいと言う作者の意図がしっかりと文体となって物語は紡ぎ出される。そして菊子にも思いがけない最後のシーン。漁で暮らしをたてる人々の厳しさと人間の美しさがいつまでも心に残る作品です。是非映像で見てみたいなあ。
妾奉公に売られた14歳からの、波乱に満ちた半生を描く。冒頭で宿業が一気にふりかかる。
途中、藍染職人の親子と心を交わしたり、宿屋のおかみと交流したりする場面は、後味の悪い別れ方をする割りには、ぬくもりのある印象を受ける。生糸生産や藍染、宿屋に鰯加工と、底辺で働く人々が活写されている。
不幸に邪魔されながらも、確かな細い縁で結ばれているらしい静次郎とは、すれ違い続ける。転々と環境が激変し、小説としてややまとまりに欠けるきらいはあるが…。終盤に、少女時代に蛇をつかんだエピソードでまとめたのは、強引だがさすがプロである。
最後の場面では、作者から人間にそそがれるまなざしの優しさがにじみ出ている。
途中、藍染職人の親子と心を交わしたり、宿屋のおかみと交流したりする場面は、後味の悪い別れ方をする割りには、ぬくもりのある印象を受ける。生糸生産や藍染、宿屋に鰯加工と、底辺で働く人々が活写されている。
不幸に邪魔されながらも、確かな細い縁で結ばれているらしい静次郎とは、すれ違い続ける。転々と環境が激変し、小説としてややまとまりに欠けるきらいはあるが…。終盤に、少女時代に蛇をつかんだエピソードでまとめたのは、強引だがさすがプロである。
最後の場面では、作者から人間にそそがれるまなざしの優しさがにじみ出ている。
乙川作品の持ち味は出ているのですが、ファンには「またか」という感じが残るようですし、初めて読むならもう少しインパクトのある受賞作品をお勧めしたくなります。
運命に流されつつ、悩み苦しむ1人の女性を丁寧に書いています。
ただあまりにも、丁寧で緻密すぎる感じ否めません。
作者のペースにあわせて、ゆっくりと丁寧に読めば、すばらしい作品なのですが。



