村上龍の経済関係やサッカーのエッセイが好きです。小説はほとんど読んだこ
とがなかったのですが、今回初めて読んでみました。何かのエッセイで村上氏は
箱根の別荘に籠ってこの本を書き上げたと書いていました。その時は、
北朝鮮の特殊部隊や兵器、ヤドクガエル、化学関係の書籍を大量に購入
して、お薦め商品のリストがその手の本ばかりになって、びっくりした(警察が
みたら捕まるんじゃないか)と書かれていました。毎日、執筆に没頭して時々下
界のスーパーに買い物に行った時は、ものすごい外観だったようです。
また、他のレビュアーの方の指摘によると、実際の福岡の街がリアルに書かれ
ているようです。書物での調査や現地に滞在して、取り憑かれるようにして書き
続けたことが良く分かります。
日本国政府の対応として、「目的」と「目標」を最初に明確に設定せず。目先
のことにとらわれて場当たり的に対応したと書かれています。確かに、人間は大
きな問題にぶつかるとその問題を直視せずに、周りの細かいことや急ぎのことか
ら手を付けてしまい、大きな問題の存在から目を背けることがあると思います。
本当のリーダーシップとはこのような危機的な状況に発揮されると思うのですが、
現実の世界で起こっても同じような対応だろうと思い、悲しい気持ちになります。
明確な「目的」と「目標」(上層部のみで末端には知らされていないのだろうが)
を持った、北朝鮮特殊部隊と状況に流されてしまう日本政府との対比が明確に書
かれています。
上巻では北朝鮮特殊部隊の独壇場ですが、下巻でどのような反撃がイシハラグ
ループからあるのか楽しみです。
半島を出よ (上)
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日本の経済が縮小していく過程とそれに対する対策、北朝鮮の福岡占領とそれに対する日本政府の対応等々、いかにもあり得そうなリアルな展開。北朝鮮側の面々、日本政府の面々、そしてホームレスの人々の生い立ち、キャリア、視点などが詳細に描かれ、物語の背景も細かく作り込まれている。それでいて物語全体のスピード感が損なわれていないのはがすごいところ。
この作品のポイントは、章ごとに話の主観人物が切り替わり、役人、イシハラグループ、北朝鮮の兵士と様々な立場からこの事件を眺められることだ。北朝鮮の兵士は「木でできた短い箸は使いづらい」と嘆いたり、日本人が金正日と呼ぶのを「偉大なる首領同士」と呼んだり、徹底的に北朝鮮兵士としての立場を踏まえている。
イラク戦争で米兵に正義を名目に勝手に侵入して勝手に略奪、虐殺、強姦されるイラク人の気持ちが少し分かるような気がした。むしろこの北朝鮮兵士のほうが紳士的といえるぐらいだ。しかし外敵には変わりは無い。
その外敵に媚びて順応する福岡市民。臭いものには蓋をと福岡を封鎖する政府。そして外敵との戦闘に何かを見出そうとしているイシハラグループ。何が本当の正義なのか。それは実は結果論なのかもしれない。
イラク戦争で米兵に正義を名目に勝手に侵入して勝手に略奪、虐殺、強姦されるイラク人の気持ちが少し分かるような気がした。むしろこの北朝鮮兵士のほうが紳士的といえるぐらいだ。しかし外敵には変わりは無い。
その外敵に媚びて順応する福岡市民。臭いものには蓋をと福岡を封鎖する政府。そして外敵との戦闘に何かを見出そうとしているイシハラグループ。何が本当の正義なのか。それは実は結果論なのかもしれない。
この「半島を出よ」という作品は、上巻と下巻で少しスタイルが違っていて、上巻が徹底的にリアルな想像を元に執筆された話であり、下巻はエンターテイメント性を重視した物語へと展開される。それ故、若干上巻・下巻で読者として戸惑ってしまう部分はあったが、全体的にとても楽しむ事が出来た。話のボリュームは多いけれど、作品通してスリリングな展開が広がり、飽きずに読ませてしまうのはやはり流石だと感じた。
この上巻は北朝鮮が日本でテロを起こす事がメインで描かれているが、これに関しては非常に緻密な情報収集を行った上での、一種のシミュレーションといった感じで、前述したように、話が現在の日本の状況に即していて、とてもリアルな緊張感に満ち溢れている。村上龍の戦争小説として、「愛と幻想のファシズム」や「五分後の世界」といったものは、ある条件を最初に設定しておく事で、物語を構成していた故に、読んでいて現実感というものがとても遠くにあった気がするのだが、この小説はとてもタイムリーな話題ゆえ、僕自身、身の毛のよだつような、恐怖を感じる事が出来た。
特筆されるべき点は、様々な人々の目線より作品が構成されていく所だろうと思う。政治家、一般市民、北朝鮮の兵士、マスメディア、社会からはみ出したもの達等、それぞれの価値観の違いがあり、優先するべきものも違う。そういった中で発生する、ほんの少しの認識のズレが、様々な問題を引き起こし、事態はどんどん悪化していく事になる。実際僕がこの人だったら、どういう行動を取ったのだろう?そういった想像をしながら読んでいくと、やはりこの小説に出てくる人々と同じ行動を取らざるを得なかったのではないか?そんな風にも感じさせられる。本当に取らなくてはならない行動を示されていても、それぞれの立場でモノを考えると、とてもややこしい問題が数多く存在し、正しい行動に繋がっていかないように思う。そういう意味で色々と僕自身も考えさせられる事となった。
多くの情報量を含み、読者に飽きさせない緊張感を作品中に張り巡らせた、村上龍の渾身の作品であるように思う。読んで決して損は無い小説だと思う。
この上巻は北朝鮮が日本でテロを起こす事がメインで描かれているが、これに関しては非常に緻密な情報収集を行った上での、一種のシミュレーションといった感じで、前述したように、話が現在の日本の状況に即していて、とてもリアルな緊張感に満ち溢れている。村上龍の戦争小説として、「愛と幻想のファシズム」や「五分後の世界」といったものは、ある条件を最初に設定しておく事で、物語を構成していた故に、読んでいて現実感というものがとても遠くにあった気がするのだが、この小説はとてもタイムリーな話題ゆえ、僕自身、身の毛のよだつような、恐怖を感じる事が出来た。
特筆されるべき点は、様々な人々の目線より作品が構成されていく所だろうと思う。政治家、一般市民、北朝鮮の兵士、マスメディア、社会からはみ出したもの達等、それぞれの価値観の違いがあり、優先するべきものも違う。そういった中で発生する、ほんの少しの認識のズレが、様々な問題を引き起こし、事態はどんどん悪化していく事になる。実際僕がこの人だったら、どういう行動を取ったのだろう?そういった想像をしながら読んでいくと、やはりこの小説に出てくる人々と同じ行動を取らざるを得なかったのではないか?そんな風にも感じさせられる。本当に取らなくてはならない行動を示されていても、それぞれの立場でモノを考えると、とてもややこしい問題が数多く存在し、正しい行動に繋がっていかないように思う。そういう意味で色々と僕自身も考えさせられる事となった。
多くの情報量を含み、読者に飽きさせない緊張感を作品中に張り巡らせた、村上龍の渾身の作品であるように思う。読んで決して損は無い小説だと思う。
起こる可能性がないともいえない北朝鮮の侵攻。
戦後から現在までの経済発展の中で我々は「危機感」とか「死」とかいうものをどこかに置き忘れてしまっている
殺し合いや飢餓なんて自分の世界の外側だとたかをくくっていると実際の危機に直面したときまさにこの福岡県の職員のようになってしまうのではないか
相変わらず村上龍は僕の心を揺さぶってくれた
戦後から現在までの経済発展の中で我々は「危機感」とか「死」とかいうものをどこかに置き忘れてしまっている
殺し合いや飢餓なんて自分の世界の外側だとたかをくくっていると実際の危機に直面したときまさにこの福岡県の職員のようになってしまうのではないか
相変わらず村上龍は僕の心を揺さぶってくれた



