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ワイルド・ソウル
垣根 涼介
価格: ¥1,995 (税込)

単行本
出版社: 幻冬舎
発売日: 2003/08
ISBN: 434400373X
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 111304位
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   『午前三時のルースター』で2000年のサントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞してデビューを飾った垣根涼介は、旅行会社の添乗員だった経験を生かしたリアルな舞台設定と、繊細な人物描写を得意とする新しい才能である。そんなクライム・エンターテイメント小説の気鋭が、事実を基に練り上げ1年をかけて書き下ろした意欲作が本書である。国の無責任な移民政策による被害者たちの怨恨という難しいテーマを、きめ細かく鮮やかに料理し、読者を突き抜ける爽快感へと導く。

   外務省、ひいては日本国にだまされた形で南米へ移住し、辛酸をなめた人間たちの復讐譚(たん)が、骨太につづられる。爽快なリベンジというのは妙な話だし、書名と装丁からも、盛大に人が死んだり大量な血が流れるステレオタイプなクライム・ノベルを想像しがちだが、それはまったくの間違いだ。垣根の作品に共通する要素は、「美意識を共有する者同士は、初対面から信頼しあい決して裏切らない」というテーゼと、自動車マニアやメカ好きなクールガイが多く登場する、という2点。また、ある種の性善説にもとづく博愛的世界観および諦念、それから底辺に生きる人間への優しいまなざしも随所に感じさせる。本作では、それらの「垣根要素」がうまくミックスし、更に2か月にわたる南米取材を糧に、存在感のある登場人物が大活躍する理想のリベンジ譚となった。

   主要な登場人物ではないが、外務省襲撃の目撃者で夜ごと首都高をとばすルーレット族の男性が、「機関銃がバンバン撃たれているところを見たかった」「外務省が嫌いだから…ザマアミロって思っていた」と証言する場面がある。読者の気分を代弁すると共に、ヒッチコックのように、一瞬作者が姿を現したようで面白い。今後も目の離せない書き手のひとりだ。(坂本成子)

外務省・政府・警察側の視点を織り込めば、もっと重厚な作品に仕上がったと思います。
 ある方の著作を読んで、おすすめの本として紹介されていたので、
読んでみました。スピード感があって、5日ぐらいで一気に読んで
しまいました。

●印象に残ったところ

P.63 俺はその相手から受けた恩をおまえに返す。おまえもこの俺か
ら受けた借りをいつかは誰かに返す。そういう風にして、世界はつ
ながってゆく。

→大学時代の先輩に同じようなことを言われたことを思い出しました。
新入生だった頃に、よく先輩にご飯をおごってもらいました。その時
は、恩を着せられるようでおごられるのが好きではありませんでした。

 でも、その先輩が「俺も新入生のころ、先輩におごってもらった。
だから、おまえにもおごってやる。そのかわり、また下が入ってきた
らおごってやれ」と。その時は目から鱗が落ちました。それからは気
持ちよくおごってもらい、先輩になってからは同じ論理でおごり、そ
の話を後輩にしたこともありました。そうやってつながる世界もある
と思いました。

p.146 人間、何か窮地に陥ったとき、最後に頼りになるものは、それ
までの信用でも実績でもない。人間性がいいとか悪いとか言う問題で
もない。最終的には、その本人からにじみ出す愛嬌のようなものに人
は手をさしのべるのだ。

→フォーバルの社長が、ポッドキャストのインタビューで採用基準に
ついて語っていたのが思い出されました。「明るく、元気で、素直」。
この3つがなければ、頭が良くて経験があっても採用しないそうです。
私も営業の採用の時には、「お客様に愛されるキャラクター」という
キーワードを持っています。

 ラストでFD(RX−7)が首都高を駆け抜けるシーンは非常に手
に汗を握って、スピード感があります。ネオンの光が左右に光速で蹴
散らされていくシーン。ボンネットの光の反射まで頭の中に駆け巡り
ます。

 貴子のイメージは、「ハゲタカ」のDVDに出てきた、栗山千明を思
い出されます。同じ、マスコミの役割だったからでしょうか?

 全般的に、外務省・政府・警察内部の葛藤や苦悩があまり書かれてい
なかったのが残念でした。警察内部でやり手の警官がいるのですが、も
う少しキャラクターを作り込めばより重層になったと思います。また、
首相の発表もあっさりしすぎだと思います。もう少し、そこに至る過程
とその後について書いてほしかった。

 久しぶりに、小説にはまりました。さくっと読めるので、おすすめです。
年明け早々、マイ・年間ベスト5!
日本へ帰朝する友人から纏めて譲られた中の1冊。期待はおろか作者の名前すら知りませんでしたが、久し振りにストーリーそのものの魅力に圧倒されました。

歴史物、国家・官僚の犯罪という社会派物、テロ又は犯罪を扱うサスペンス、日本人とは全く異種の資質・魅力に溢れたラテン文化論、悩みを抱え、或いは過去に辛酸をなめ尽くした者達の人間ドラマ等々、読む人の興味やツボに応じて多様な楽しみ方が出来る実に間口の広い作品です。

巷間に溢れている荒唐無稽なバイオレンスにも薄っぺらいエンタメにも流れない作者の筆力とバランス感覚、そしてそれを裏付けるストーリーの密度に拍手を送ります。年明け早々、私が本年巡り会うであろうベスト5と確信しました(遅すぎ!)。
税金払いたくなくなる(笑
ブラジル移住については、いくつかの本を読んで、それなりに知識はあったつもりでしたが、
この本はすごかったです。
とにかく、国なんて信用できないってのが実感としてわかると言うか。
とても長い本ですが、一気に読めます。
で、税金払いたくなくなる(笑
おもしろい!
おもしろい。とにかくおもしろい。
登場人物の心理的な描写、行動に至るまでの動機など、全てにおいて読み応えのある大作だった。
久しぶりに一気に読むことが出来たし、小説が終わってしまうのが勿体無いとさえも感じた。

あえてコメントをつけるとすれば、日系ブラジル人の描き方。ブラジルを意識させるためかわざとらしく非日本人的過ぎ。根本的には日本人が飾りをつけたようなやらせっぽいキャラクターになっている。
あと、登場する女性の心理描写。いかにも男の作者がつくりあげたキャラクターだと思ってしまう。
けど、小説が面白いことに変わりはない。

あと、過去に大変な苦労をした日系移民についての知識も同時に吸収できて興味深い。
ド派手な大迫力エンターテインメント
ド派手で、正に「ワイルド」な犯罪が展開される。そのターゲットは日本国家と外務省。外務省の庁舎をマシンガンでドカドカと破壊したり、元外務省関係の人間を人質に取り総理大臣(=国家)の謝罪を引き出そうとしたり・・・。
この犯罪の動機は、重たすぎる史実がベースとなっている。1950年代、60年代のブラジル移民政策。ブラジルの未開の国土を開墾すれば豊かになれるという国家及び外務省の宣伝により、4万人を上回る国民が現地に渡ったものの、実際に行きついた先はジャングルのように荒れ果てた開墾困難な土地・・・。実情は戦後の食糧難の時代に少しでも人口を減らすための、国家と外務省による「棄民政策」だったのだ。彼らの開墾の努力は度重なるアマゾンの大洪水も手伝って徒労に終わり、ジャングルの中で餓死や病死するか、または都市部に逃げ出したものの乞食や売春婦に身を貶めた。地獄の移民生活の中からまともに生きながらえたのは一握りの人間達。
この小説の中で、そうしたブラジル移民一世、二世の生き残り組が、過去の日本国家の裏切りに対して復讐を挑む。その結果不完全ながらもある一定の成功を果たす。そうすることで彼らはやっと自分の精神を縛り付けていた忌々しい悲惨な過去と決別し、自由な地への一歩を踏み出せたのだった。
読後は史実の重みに圧倒されながらも、ある種すがすがしい気分を味わうことができた。
ブラジル、コロンビア、日本を舞台にした地理的側面、犯罪の規模、動機、全ての点においてスケールが大きく読み応えある作品である。



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