メロス・レヴェル
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私は読み始めてすぐに、2作目はコメディで来たか、と思った。究極の少子化対策及び家族の絆を強める(ここでまず笑いが出ないだろうか)ために、国の主催で「アメリカ横断ウルトラクイズ」(古いね、私も)が開催されてしまうのだ。「走れメロス」がとんでもなく美化されていて、それを軸にゲームが展開される。当然、国家が主導でやるのだがら、罰ゲームはとてもえげつない。よく「命にかえても守りたい相手」とかいう言い方をするが、さて皆さん、「視力と引き換えに」とか「両足の自由と引き換えに」、「味覚と引き換え」と言われたら、どうなさいますか?私は絶対に嫌だね。
コメディとしてではなく、真面目にちょっと面白かったのは、性欲の減退、それによる晩婚化、子どもを持たないという選択を「人類としての進化」と表現していることで、これはある意味、いいところを突いているような気がする。
後半の、最後の2組が人工島を周回しながら走る場面が少々長すぎて退屈したので、星1個減。
第一に主人公がいつのまにか変わっていること。これはルール違反!!最後までいつまた出てくるのかと期待したのに。
第二にキャラクターに重みがない。背景が大切に描かれていないから、それだけ浮いた存在になる。主人公らしい人については結構詳しかったので、勝手にその人が主人公と思っていました。違うのかな?
第三に国家が背景にあり、はたまた国民全員が認知して、さらに絆と情を大切にするのを理念としているにもかかわらず、このゲームの内容はうそ臭過ぎる。設定が現実離れして、もっと無機質的なものだったらゲーム内容についても面白みがでてきたかもしれません。
とたくさん書きましたが、別にすごくつまらない物でもないので、ちょっと読んでみてください。
ひとつはゲームのシステムをいかに「ありそうに」書くか。もうひとつはゲーム性を超える読書の喜びをどうやって読者に与えるか。
この小説、システムは面白い。人間関係の強弱で争う情緒的な日本型デスゲームに、湿っぽいこの国の空気を感じました。宿泊施設や会場の設定、非人間的に描かれがちな担当官にいささかの個性を与えたあたり、うまいもんです。
ただ、この小説には大きな傷があります。途中で話者が変わってしまう。恐らく読者に意外性を与えることが目的なのでしょうが、これはダメ。小説ではないものになってしまう。システムそのものに本質が宿るゲームと違い、行き当たりばったりなキャラクターの交代は反対です。文学でなくなるから。小説の自律性は筆者といえど、壊すことはできないのです。少なくとも、担当編集者はそのことを作者に教えてあげるべきでした。
作家は後半もがんばって書いているのに、もったいなかったですね。
デビュー作「そして静粛の扉を」を読んだ時に「バトル・ロワイヤル」に非常に似た作品だとは感じましたが、こちらの「メロス・ノヴェル」の方が中身は似ていました。……とい!!っても、スリリングさを十分に感じさせましたし、レヴェルが上がる度の緊迫した闘いと敗者のペナルティは読んでいても緊張感が伝わってきます。ただし「そして粛清の扉を」もそうでしたが、欠点も目に付き、ネタバレになるので詳しく書けないもののレヴェル3での下のジャージを脱ぐことはルール上不可能でしょうし、応援する観客や家族の心境や参加者の思惑などが曖昧になっていた部分もあり、テーマとしては面白い舞台設定ではあるものの、その展開に細かさをもっと配慮してほしかったとは思います。しかし最後まで目が離せない展開が続いたことと、参加者の家族や絆についての在り方は読みごたえがありましたし、欠点をカバーしていたように思います。とにかく次作にも期待したいです!



