のっけからの超激しい性描写にめんくらって、
「なんじゃなんじゃ、ポルノ小説かや?」
とおもってしまった。
表現が奇抜で、刺激的なもんだから、底に流れるすごく繊細な感覚的な主題を見逃してしまうところだった。
とくに印象的だったのは「堕天使」
SMの出会い系サイトで知り合った女と不倫の関係をずっと続けている産婦人科医。お互いに伴侶とはセックスレスだが、不仲というわけではない。
家庭と不倫の両立が上手く行っていた、不倫相手が夫の子を妊娠するまでは…。
彼女は「夫の子どもなど産みたくない」と言い、堕胎を主人公に依頼する。
傍目には幸せに見える主人公の人生のすきまに見え隠れする小さな煩悶。
それは、立場は違っても誰にとっても普遍的なものなのかもしれない。
さまざまな状況、世代、それを通して書かれる女性の心理。そして、それを取り巻く男性のナイーブな心理。相手を分かろうとすることが愛なのかと思うけど、男と女は永遠に分かり合えないものなんじゃないか。そう思ってしまう。「昨晩お会いしましょう」と言う心理。あまりに切ないが、その強さが、女性そのものだと思う。
男性にはここまでの強さはもしかしたら信じられないほどの脅威となりうるだろう。しかし、他の短編には男性の切ないほどのナイーブさが書かれており、そのガラスのような心を女性はどこまで分かって上げられるんだろうか。いつもこの著者の本を楽しみに読んでいるが、この本もとてもすばらしく私の心に共鳴しました。