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オイディプス症候群
笠井 潔
価格: ¥3,360 (税込)

単行本
出版社: 光文社
発売日: 2002/03
ISBN: 4334923577
おすすめ度:4.0
Amazon ランキング: 210188位
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綾辻行人『十角館の殺人』への返歌
免疫機能を低下させるウイルス性の奇病「オイディプス症候群」に
感染した友人の頼みで、クレタ島南岸に浮かぶ孤島「牛首島」に
やって来たナディア・モガールと矢吹駆。

やがて島は嵐によって外部との連絡が断たれ、その状況下で、
ギリシア神話に見立てられたような連続殺人事件が起きる……。

前述の「オイディプス症候群」はHIVがモデル。

通常の病原体とは異なり、それ自体毒性を持たないのに免疫機構を狂わせていくこのウイルスに、
意図することなく、神託通りに父を殺して母を犯し、テバイの町に災いをもたらした、ギリシア悲劇の
主人公の名前が与えられているところに、本作のテーマが集約されているといえます。

また、本作では《孤島》という、ミステリにおいては定番の舞台が選ばれていますが、駆は
その本質を「出るために作られた檻、第三項が生じるように引かれた線」と捉えています。

犯人は内と外を同時に鳥瞰しうる第三項に位置すべく、
内と外とを分割する《孤島》という舞台を選びます。

そうして特権的位置を占めた犯人は、内と外を自在に往還し、
関係者を支配しようとしますが、本作においてその目論みは、
内と外の境界を無効化し無差別に襲い掛かる「オイディプス
症候群」という疫病に含意されるものによって、頓挫すること
が運命付けられているのです。

それは、十人もの死者を出す連続殺人事件の引き金となったのが、
悪意のない、ある人物のささいな不注意であったということからも
窺うことができます。

何か高級な書物
 哲学的な論議や文献、ギリシャ神話への薀蓄など、すべてが分からないでも、何か高級な書物を読んだ気分になる。この作品はもう一度、読み直さなければならないと感じている。それだけの内容がある。
 一方で、ミステリーとしての充実度はどうだろうか。伏線や理屈などきちんとつながってはいるが、ストーリーとして盛り上がりに欠ける感はないだろうか。読んでいて恐怖感もない。カケルvsイリイチの対決もいいが、作品ごとに、もっと輪郭をくっきりと描かなければならない。「知ってる人は知っている」ということでファンに頼っているのはいただけない。実際のところ、笠井潔氏の作品を相当程度まで理解している読者は少ないのだ。
何かの試みなのでしょうか・・・?
前半は面白かったです。凝りに凝った舞台設定に、様々な登場人物たちによって繰り返される議論や論戦。これらが最後にどうまとまるんだろう、とじりじり待ちながら読む楽しみがありましたね。

でも後半になると、執拗なまでに書き込まれている推理や薀蓄が少し邪魔でした。それらが物語のスピード感を邪魔してる印象です。
矢吹駆シリーズに独特の哲学的な文章も、内容的には『哲学者の密室』からそんなに大きく展開していない気がする。フーコーをモデルにした人物が登場して場を盛り上げてはいるけれど、ハイデガーが出てきた前作に比べるとその登場する必然性が薄い感じが。

ただ、これまでの駆シリーズとは全体的に色合いの違う作品なので、これまでの作品と比べても仕方ないのかも。ひょっとすると笠井先生は何か新しいことを試みたのだけれど僕に読み解けなかっただけということも考えられます。皆さんはいかがでしょうか?

笠井潔ならではの快作
 テロやプレイグ等の様々な事件をメタファーとして織り込み、ギリシャ神話
をモチーフにした物語を語って行く。孤島をテーマにした綾辻作品や、英国女
流作家の複数の作品を彷彿させるモチーフを複合構築させて、俗にいう新本格
推理小説は進んでいく。「外論」など、途中執拗に繰り返される哲学的な記述

は、後半、密室トリックの文学的な位置付けに取り組んだ著者の姿勢が判るよ
うになっているところも評価したい。探偵小説の評論も著す笠井独自の世界を
堪能できる作品になっている。ずしりと感じる本の重さに背かない、重厚な作
品といえよう。最後、犯人が**するところだけ、唯一不満を感じた。

むうう・・だが次こそは
楽しく読まれた方も多くいらっしゃるようですし、その意見を否定する訳ではないのですが、私的な感想としてはカケルシリーズの中では最も完成度の低い作品になってしまった感が否めません。その理由は、この作品に否定的なレビューを書かれてる方々とほぼ一緒なのですが、豊富な材料が詰め込まれたものの煮込み切れなかった野菜スープという感じで、エピソード同士の絡み合いが不自然に終わってしまったと思えるのです。素材一つ一つは美味しく読めるだけに、それらが総合したひとつの話として上手く溶け合っていないのが残念です。

ただ他のレビューを書かれた方々も同様だと思うのですが、この作品に対しての否定的な意見はむしろ「笠井氏の力量はこんなものではない」という信頼と期待の裏返しであるのでしょうし、10作品を目指すと宣言されているカケルシリーズに「バイバイ」や「哲学者」で与えてくれたあの興奮がもう一度甦る事を私も切に期待、そして信じています。




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