『われわれはみな、ゴーゴリの「外套」から出た』とドスエエフスキーがいったように、ロシア近代文学は、ゴーゴリを父と仰いでいる。
この「隊長ブーリバ(原題:タラス・ブーリバ)はゴーゴリのリアリズム文学ではなく、ロマンチズム文学に属する名作である。
ブーリバは南ロシアのコサックの隊長の名前である。
この物語は、このブーリバと敵であったポーランドと戦い抜くブーリバとその息子との愛、次男アンドリイと敵方の貴族令嬢との死を賭した恋を中心に描かれている。
息子達が捕まり、ポーランドに移管され処刑になるとき、目隠しされた息子の口から「ああ、お父さん。お父さんはここにはいないのですね」と最期の言葉が発せられると、
ポーランドの群衆の中に仮装して忍び込んだブーリバは「ここにいるぞ!」と叫んで、姿を消す。
郎隊長となったブーリバ自身も、最後の戦いでついに炎の中に消えていくが、同志達を先に逃がし、こう叫ぶ。
『さようなら、戦友のみんな!わしのことを思い出してくれい、そして来春にはまたここへやってきて、思い切りふざけ散らしてやってくれい!(中略)
われわれコサックが恐れるものがこの世にあると思うか』
小説全般にわたってセンチメンタリズムなど微塵もなく、戦い抜く、雄々しい勇敢な男達が、また庶民が描かれている。
ゴーゴリの精神は、トルストイ、ドストエフスキーたちに受け継がれ、各々が世界文学史上に残る名作を次々に生み出すのである。
貴重な名作の復刊である。
隊長ブーリバ (潮文学ライブラリー)
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