大阪府警南方署強行犯係シリーズ第2作(ただし大阪弁は限定的にしか登場しない)。ユーモアミステリとしてのキレは正直言って前作より落ちる。特に登場人物が少ないこともあり、犯人はかなりわかり易い。だが、今回はテーマの重さにうちのめされてしまった。動物虐殺大国日本の実態が鮮烈に描き尽くされているのだ。それも資料の羅列や演説ではなく、ストーリーそれ自体によって端的に。(取材中に)「本当に人間であること、日本人であることが嫌になってしまった」という作者コメントに同感しないものはいないだろう。
いちおう先進国のハシクレであり、戦争や貧困といった焦眉の課題に終われているわけではない日本がこの実態を放置しているのは、もちろん政治の無能と、それ以上私たち自身の無知・怠慢・偏見だ。私自身動物愛護運動というものに独善・ファナティックなイメージを持っていたし、今なおそうした人々、勢力は少なくないと思っているが、では確言できるほど勉強しているかというとノーだ。今回この本を読んで、人間の問題が先だとか宗教感がどうのいう前に、強者・支配生物として最低限欠いてはならない姿勢を日本人が忘れていることを思い知らされた。まさに万物の霊長失格である。
この本は僅か二百頁余りで、タッチも軽快ですぐ読める。また、これだけ重く絶望的なテーマをしっかり描きながら、読後感は明るく力強い。多くの人にお奨めしたい。
黄泉路の犬 (トクマ・ノベルズ 南方署強行犯シリーズ)
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