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石の猿〈上〉 (文春文庫)
ジェフリー ディーヴァーJeffery Deaver池田 真紀子
価格: ¥770 (税込)

文庫
出版社: 文藝春秋
発売日: 2007/11
ISBN: 4167705575
おすすめ度:4.0
Amazon ランキング: 31051位
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ストーリーに無理なところがあり
「中国の密航船が沈没、10人の密航者がニューヨークへ上陸した。同船に乗り込んでいた国際手配中の犯罪組織の大物ゴーストは、自分の顔を知った密航者たちの抹殺を開始した。」
 読み始めて疑問に思ったことは、「科学捜査の天才」ライムらのチームが、ゴーストが密航者全員を抹殺するはずだという前提のもとで捜査を進めたことだ。すでに世界中で指名手配されているゴーストが、目撃証人だからという理由だけで、危険を冒してまで密航者全員を抹殺しようとのは不自然である。最終的には、「ゴーストが全員を抹殺しようとするのは不自然である」ことをライムが指摘してゴーストの目的を推定するのだが、捜査そのものが不自然な前提に基づいて進めらていくところにストーリーの出来の悪さがある。
道の常は為すこと無くして、而も為さざるは無し
 本シリーズはいつも深遠なタイトルがつけられており、読んでいていつもそれ
に気付かされます。今回の『石の猿』とは、蛇頭に殺された中国人密航者の生き
残りが首から提げていた孫悟空のお守りを指しています。日本人にはなじみの深
い孫悟空が異文化東洋の象徴となっている様に思われます。もうひとつ密航者の
命を狙う蛇頭の捜査に加わった中国人捜査官が、危険を承知で麻痺回復への手術
を望むライムに対して「あんたは孫悟空だ」と指摘します。孫悟空は妖術が使え
て頭がよくて強い、おまけに怒りっぽい。そしてありのままの自分を無視すると
説明します。

 サスペンスのストーリーと関係が比較的薄いこのような場面が私のお気に入り
です。ほかの中国についてのディテールは情報の少ないアメリカ人にはエキゾ
チックでありながら、日本人が読んでも矛盾を感じない作者の取材と筆力が窺わ
れます。

 各章の冒頭には西洋人の書いた『囲碁』の解説が引用されていますが、こちら
も本作品の全体を象徴しており無駄がありません。このように細部にこだわりな
がら全体を調和させるのは本作品を単なるシリーズもののサスペンスと言う枠を
飛び越えたものにしているといえましょう。
先読みするのもまた楽しい
リンカーン・ライムシリーズにハマって4作目。今回は「事件の真相を推理」しながらライムシリーズ特有のいわゆる「どんでん返し」を当ててやるぞっと、最初からとても楽しめた。ストーリーの展開としては2作目の『コフィン・ダンサー」系統なのかなぁ…どこまでも執拗に獲物を狙う犯人。でも今回はそれぞれ魅力的な中国人キャラ&中国の社会情勢、アメリカの中の中華移民、風水、漢方、歴史、政治、ジンクス、迷信?などなど中国ワールド満載で、とても新鮮な気持ちで読めた。そういう意味では最後のどんでん返しは他作よりパンチが弱かったかな??最初からあいつが怪しい、この人か?それとも??と予測を立ててみたものの、いつの間にかストーリーに夢中になって最後に驚かされるっていういつものパターン。笑 でも、ちょっと登場人物が多すぎた感があるのと、中国の風俗的ないろいろは日本人の自分にとってもなじみが深く、描写に物足りなさがあった(アメリカ映画に出てくるへんてこ日本の中国版?)そしてある程度、どんでん返しを先読みできてしまったことが難点かなぁ。
今度の敵はひと味違う
 全身麻痺の捜査官、リンカーン・ライムが活躍するミステリの第四弾です。
 第一作の「ボーン・コレクター」が映画化されているのでご存知の方も多いシリーズです(続編が出ないのは映画は不評だったのかな?)。
 さて、本作でのリンカーン・ライムとその助手でありパートナーのアメリア・サックスが対決するのは中国から不法移民を運んでくる蛇頭のボスの一人、ゴーストです。彼は、極めて猜疑心と警戒心が強く、いまだかつて中国本国はもちろんどんな国際的な警察組織にも顔が割れていない人物です。そして、執念深く、残虐で、同じ中国人移民を人と思っておらず、金のためには平気で売り買いするし、場合によっては本作の冒頭でのシーンのように自分の為ならば全員殺すことも辞さないかなりの悪党です。
 その彼が福竜丸という船でアメリカに移民を連れてこようとして失敗。
 船を爆破することでなんとか水際での逮捕を免れた彼が、無事にアメリカに逃げ込んだ移民達を追いつめて殺そうとする中で、リンカーン・ライムたちと戦うというのが本書です。上巻ではまだ直接対決にはいたっていませんが、今迄の敵と違って前述のような性格と残虐性、そして金の力で強力なコネを武器にライムたちと戦うゴーストとの戦いは、今迄のシリーズにもひけをとらない激しい戦いになる模様。手に汗握るサスペンスミステリに本書は仕上がっています。
 まだ上巻を読んだところですが、ここからどんどん面白くなっていく予感がありです。
オリエンタル趣味に彩られた、ライムvs‘ゴースト’の手に汗握る対決
<リンカーン・ライム>シリーズ第4弾。
’03年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第5位、「このミステリーがすごい!」海外編第20位。

今回の敵は、インターポールから指名手配されている、蛇頭の殺し屋‘ゴースト’。

中国からの不法移民を乗せた貨物船がロングアイランド沖で爆破され沈没する。‘ゴースト’の仕業だった。‘ゴースト’の次の狙いは、危機一髪で船から脱出した二組の家族の命だった。

冷酷無比な殺し屋‘ゴースト’は、チャイナタウンのつてをたどり、手下を使って彼らに迫る。一方、ライムも、例によって、このシリーズの特長である得意の証拠物件の科学捜査の結果、一覧表が埋ってゆくにしたがって、着実に彼らの足取りを追う。さらに‘ゴースト’を捕らえるべくそのアジトの特定も同時に進めてゆく。ライムが先か、‘ゴースト’が先か。ふたりの手に汗握る対決は、本書の最大の読みどころであり、まさに圧巻のひとことにつきる。

今回は『エンプティー・チェア』事件から、舞台は再びニューヨークに戻り、おなじみの<ライム>チームが活躍する。彼らの捜査活動に、密航者にまぎれて潜入捜査官としてやって来た異色の中国公安局刑事が加わり、ライムと親交を深めながら“いい味”を出しているのも興味深い。

また鑑識技術の腕をあげたアメリアが、水深30メートルに潜り、沈没船の捜索を行い、数々の証拠と共に生存者を発見するくだりは、本書のハイライトのひとつといっていいだろう。

‘ゴースト’の正体、そしてラストでの大逆転と、ディーヴァーならではの“どんでん返し”も健在であるが、何よりも本書は、物語の随所にオリエンタルな趣向(歴史・思想・風水・習慣・格言・行動規範など・・・)が盛り込まれ、<ライム>シリーズのなかでも異彩を放っている。



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