連作短編集となっているように、最初の3作、後半の2作は、それぞれ時間を前後しながら話がつながっています。
すべての話をつないでいるのが、小さな20口径のコルトオートマチック。
手にした誰もが、その魔力にとりつかれたかのように、警察にも届けず、隠し持ってしまいます。
拳銃を手に入れた主婦、主婦に拳銃を渡した家出少女、少女の彼氏から拳銃を買ったサラリーマンというように、時間をさかのぼって、拳銃に関わった人々が描かれ、次第に謎が解かれていくといった形式です。
それぞれの短編が非常に完成度が高く、一作を読んだだけでも十分に楽しめるものですが、5つの短編を全部読むと、思わず、うまいな、とつぶやきたくなる構成の妙です。
おすすめです。
冷たい誘惑 (文春文庫)
|
物語は5つの作品の連作短編集で、いずれも中心には小さな拳銃が物語を作っています。最初に収録されている「母の秘密」では、32歳の主婦・織江は同窓会で飲みすぎて、新宿歌舞伎町で寝ているところを家出中の少女に起こされ、気付いた時には拳銃を渡される。警察に届けようかとも考えるが、取り合えず自分の手元に置き、日常の中を狂気を描いています。続く「野良猫」では、その拳銃を手渡した家出少女がどのように拳銃を手にしたかが描かれ、この他にも偶然に手に入れてしまった拳銃を題材とした物語が続きます。日常の中での非日常の狂気を描くことは乃南アサの魅力であるともいえますが、その魅力が満載されているのが本書です。



