とにかく、面白い!!
ある小劇団が、1本の芝居の打ち合わせから本番、そして無事公演を終え、打ち上げに至るまでの話を、劇団員やその関係者である各登場人物が、それぞれに想い抱く感情や
そこで起こるトラブルに一喜一憂する様などを、劇団という枠の中で、笑いあり涙ありに描いた痛快な作品。
僕自身は劇団のことも、また演劇自体のこともまったくといっていいほど知らないのですが、それでも本当に面白い!!
語り部(この語り部の存在も作品にしっかりフィットしていて面白い)がポツンポツンと笑えるフレーズを織り交ぜるテンポも心地よいのですが、特に各登場人物の「 」の中(セリ
フ)の面白さなどはもう秀逸の一言、読みながら何度も大笑いしました。
それでも、笑いの裏には涙ありではないのですが、人間の持つ抒情的な部分もしっかりと捉え切っていて、人の心が揺れ動く様を独特の感性で描き出す、著者の俊才ぶりが至る
ところに滲み出ています。
そして、この「劇場コモンセンス」というタイトルがいい!!
「コモンセンス(Common Sense)」は直訳だと「常識」や「良識」なのでしょうが、ここでは、劇団を統制するための習わしや秩序という意味で捉えた方がいいのでしょう。
劇団という小集団の中で人間関係を通じて人との繋がり方、または社会との関係の持ち方についての個人的規範を学び掴んで行くという意味も込められたりしているのだろうかと
思うと、ちょっと感慨深くもなったりして、読み終わった後、このタイトルの意味の重さが、改めて心に残りました。
劇情コモンセンス
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前川麻子を知ったのは、もう20年ちかくも昔のこと。放送作家を父に持ち、幼い頃から児童劇団に属し、10代でポルノ映画に主演した彼女は、当時、「品行方正児童会」という劇団を主宰、ありあまる才能を見せつけ、激情を発散させていた。
その後、いくつかの結婚と離婚を経て、小説を書いて、舞台に出たり書いたりして、現在に至っている。しかし「品行方正…」以来、私が彼女の作品に触れたことはなかった。
それなのにふと彼女の本を手にしてみたのは、それが劇団を舞台にした小説だったから。あの前川麻子が劇団を描いた。それならやはり読みたい。
遙か上空から見下ろすような、神様の視点で語られる、寓話のような進行。物語は劇団・木村座の舞台が企画され、上演されるまでの騒動。
「演劇の人々が皆、実際の年齢よりも若々しく見えるのは、ひとえに貧しいからなのです。社会性のない幼稚さが若々しさに見えているだけです」
「本物の自分を突き詰めたくて何者かを演じていたはずなのに、何者かを演じているだけの自分になってしまっているなんて…こと芝居において、巧いというのは命取りです。巧い役者と言われるよりは、いい役者と呼ばれた方がよほどの好評であることは、容子にもわかっていました」
自殺、援交、横領、不倫、妊娠…はみ出していかざるを得ない人々の激情の日々。確実に破綻していながら、完全には破綻しきらない。それはなぜか。
そこに芝居があるから。そのためだけには、芝居人の全てが真っ直ぐになれるのだ。
「劇情、コモンセンス」
いいタイトルだと思った。そして、自分が舞台から遠く離れてしまったことを、また自覚した。



