ひとつ前に戻る

ブライトン・ロック (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)
グレアム グリーンGraham Greene丸谷 才一
価格: ¥1,050 (税込)

新書
出版社: 早川書房
発売日: 2006/06
ISBN: 4151200320
おすすめ度:5.0
Amazon ランキング: 238119位
発送可能時期: 通常24時間以内に発送

amazonの詳細ページへ
絶対悪は存在するか
本作は、常に剃刀と硫酸の壜を持ち歩き、わずか十七歳にしてどんな暴力をも厭わない
(時には人殺しさえも)不良少年と、彼の大罪に気付きつつも彼への愛を惜しまない
(どころか彼と一緒に大罪を背負う覚悟までした)少女、そして自身の正義のために
彼を執拗に追い回す女との駆け引きを描いた、英国、そして二十世紀を代表する
作家の一人であるグレアム・グリーンの初期作品にして代表的長編である。

頁数は五百頁弱で、いささか長いように思われるが、グリーンの軽快な筆致と
丸谷才一の名訳が巧く合わさり、見事にそれを感じさせない。私は文字通り、
息つく暇もないといった具合に、一気に読み終えてしまった。

この作品の主題は、何といっても『善と悪』についてだろう。法治国家や、
世間一般の倫理観では、どう考えてもアイダ(女)の行動が正しい。だが、アイダの
独善的な善悪・正義の定義(それを相対的なものだとは認めず、自らの考えを盲目的に
絶対と捉えている)は嫌悪感すら覚えるし、ピンキー(不良少年)の物の見方(例えば、
恋愛やセックスに対する)や鬱屈とした立場から来る、言い知れない、そして誰もが
経験するわけではない不毛な怒りに、十代半ばの自分自身を見てしまった私は
ピンキーの側に立つしか術はなかった。いや、この作品を読む前は確かに抱いていた
正義感を捨てずに、アイダを応援出来る人間は、一体何人いるのだろうか。
無駄話が過ぎた。とりあえず、この作品を十代の貴方、そして瑞々しい感性を
忘れない貴方に薦める。グリーンの作品を十代の頃に読めた人は、幸運だ。

追伸
人一倍正義感を持っていると自負していた私だが、読了後はアイダに殺意を抱いた。
それほどまでに、正義とは脆く、相対的なものなのかもしれない。



本のみちしるべ Powered by Amazon Web Service
PR: FS研究室