ミラン・クンデラもいろいろ読んではみたけれど、私にとっていちばん突き刺さったのは
この小説。
ときにキザったらしくもあり、鬱陶しいまでの知性を披露してみせて、けれども常にどこか
薄暗い陰影を漂わせる、このチェコ人作家による自伝的小説。
生は彼方にLa vie est ailleurs。そもそも、タイトルからしてあまりに儚い。
とてつもなく感傷的な文体で、詩人をめぐる物語を紡ぎ出した一冊。
黄昏の空の明るい藍色がどこか似合う一冊。生に恋焦がれ、しかしその生は絶えず彼岸に
横たわり、それゆえにこそことばを愛し、しかし、いかにことばを尽くせども、その生は
なお遠い。
いみじくも、生は彼方に。
このレビューに際して、ペラペラとめくりながらふと思ったのは、プルースト『失われた
時を求めて』好きはきっと好きになれる一冊なのでは? ということ。
とにもかくにも、もっと読まれていい一冊であることは疑いを容れない。
生は彼方に (ハヤカワepi文庫)
ミラン クンデラ/Miran Kundera/西永 良成
価格: ¥1,029 (税込) 文庫 出版社: 早川書房 発売日: 2001/07 ISBN: 4151200088 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 75683位 発送可能時期: 通常24時間以内に発送 ![]() |
クンデラ初期の作品。
舞台は「プラハの春」の前後。若き詩人を中心に、彼の両親(特に母親)や友人、恋人といった人々との繋がりを激動の時代のうねりと絡めてストーリィは展開します。
時代設定からすると、同著者の「存在の耐えられない軽さ」と同じか、と思われる方もいるかもしれませんが、むしろ同時代をまるっきり異なる心性を持つ人物の側から描いていると言えるかもしれません。このモチーフは、今、日本にいる私達から見ても、遥か昔の(今は亡き遠き)共産主義国の話ではありませんね。
章ごとに異なるパースペクティヴを交差させる技法等、後のクンデラらしさの原型も存分に楽しめます。クンデラ好きな方はどうぞ楽しんでください、クンデラを読んだことのない人(特にこの時代背景に興味ある方)にもお奨めです。



