ひとつ前に戻る

Mr.クイン (ミステリアス・プレス文庫)
シェイマス スミスSeamus Smyth黒原 敏行
価格: ¥819 (税込)

文庫
出版社: The Mysterious Press
発売日: 2000/08
ISBN: 4151001514
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 100993位
発送可能時期:

amazonの詳細ページへ
底なしのワル
天才的な頭脳を持つとことん悪い男ジャード・クインが主人公。
彼は犯罪プランナーとして、表舞台には立たず、裏から悪逆非道な計画を立て実行させる。

彼の仕掛けは、すべて最初は何に使われるのか全く分からない。それが話が進むに
つれてジグソーパズルのピースが1つ1つがぴたりとはまって一つの絵になるかのごとく、計算されつくした犯罪の全貌が浮かび上がる。
すごい悪人だが、彼の仕掛けがぴたりとはまるたびに思わず、「なるほど!」とうなってしまう。

犯罪小説で相当アクドい話なのだが、クインのあっけらかんとした態度と、あまりに、ぴたり、ぴたりとクインの計画がハマりすぎるために、
かえってブラックユーモアがたっぷりきいたコメディを読んでいるような感覚にもなり、読んでいて救われる。
魅力的か魅力的でないかといわれれば、品性を疑われるのを覚悟で魅力的だと答えたい。

果たしてここまで悪い主人公がどんな結末を迎えるのか?
胸くそ悪いが、目を離せない。
とにかく面白い。主人公のキャラも強烈だし
小説の構成としても、すごく良くできていると思う。
そして、内容はとことん悪趣味で胸くそ悪くて
モラルに欠けていて、それでいて目が離せない。
主人公にちょっと魅力すら感じる。

まじめな人は読んじゃだめ。誰かに買った事を知られるのも
ちょっといや。1人でひっそりと楽しみたい。
言ってる意味わかるか?
アイルランド的悪党?
 目が活字を追う速さでよどむことなく読みとおせる話。
 悪党ジェラード・クィン、通称ジャードの一人語りで話は進む。
 自らは基本的に犯罪の実行には手を染めないが、一小市民を装いつつ陰で犯罪プランナーとして暗躍する。
 とことん虚無的な男である。

 親子夫婦の関係、愛人関係についてもこれと同じ外面と内面の隔たりをもって接する。唯一信頼関係らしきものは麻薬王パディ・トナーとの間に認められるものの、これは相手を汚れ仕事や矢面と見立てての共生関係なのだ。

 父親をゆえなく殺害されたことが引き金となって自ら悪党ゲームの達人になろうと決めたらしい。人が傷ついたり死んだりしても自分は痛くないから平気なのである。もっとも、自分が痛い目に会った場合はまったく話は別で、大変情けない。

 この男には善き生きる目的はない。あえていえば、ちょっとしたいたずらから殺人まで含めたゲームそのものが目的なのである。
 スターリンやヒトラーのような正面切った大悪党ではない。
 あくまでも裏に回って悪さをする小悪党なのである。

 クィンは、人が悪くなるのは周囲の環境や育ちのせいではなくて、あくまでも自分自身の意志によるのだと言い切る。
 つまり、善くなるのも悪くなるのも思い通りにできるということになる。
 この意味で、クインは徹底した都市的犯罪者であり、現代小市民・中産階級の悪意の総代、いや映し鏡である。

 読んで溜飲を下げるもよし、後味の悪さを覚えるもよし。

男の憧れる三大職業。映画監督、指揮者、犯罪プランナー
主人公(兼語り手)のジャードが、とにかく頭がきれる。
こうやって、ああやって、こうすれば、
きっとこうなる
というのと、きっちりと読み切る。
まあ、やってることが、全部悪いことなんだけど。

表だって姿をなるべくあらわさず、裏で糸をひいて、
「現象」をコントロールする。
そのコントロールぷりっと、
ジャードの信念というか、

ワイドショーでは決して発言されないだろう正論が
愉快だ。

現実に、まわりにジャードみたいなやつがいたら、
絶対に嫌だけど。

文体がというか、ジャードのぶっきらぼうな語り口に、
慣れることができれば、一気に最後まで読めると思う。

教訓

どちらとも選びたくないものの、どちらかを必ず選ばなければならないようなときが、人生にないほうがきっと幸せだ。

これが本当の悪党!
アイルランド発というちょいと珍しい作品。犯罪コンサルタントを自称する悪党の一人称で話が進むが、この語り口は独特のウィットに富み小気味良い(ちょうど映画「スナッチ」の独白を思いだす)。

でもやっていることはぜんぜんえげつなくて、善良な市民や無関係な市民を容赦なくばたばたと犠牲にする部分は、冷静に見るとかなり衝撃的。一歩間違えるととんでもないストーリーになる部分が、紙一重で救われているようにも思える。浮気がばれ壜でなぐられた腹いせに妻に麻薬所持の疑いがかかるように仕向け、かわりに愛人を自宅に連れ込むところなどやれやれ、と思ってしまう。
第二作があるのであれば読んでみたいとは思うが、何度も読むかといわれるとちょっと遠慮しておく。でも一読には値する。




本のみちしるべ Powered by Amazon Web Service