SFが苦手な私でもすごく楽しめました。
1アイディアを、冗長に引き延ばさず短編でまとめるので、飽きずに読めます。
友人が「とにかくまずは表題作だけでも絶対読め。」と凄く薦めてきたのですが、
このアドバイスが良かったです。
ですので表題作の紹介を。
語り手は言語学者。軍から異星人の言語体系の調査チームに招かれます。
相手の言葉を知る、というのは単純に林檎→appleと、置き換えの言葉を覚える、
ということではありません。
考え方も違えば、文法のあり方も変わってくるのです。
語り手は、異星人の言語を調査する中で、逆に異星人の考え方も獲得していく。
そしてその見方で自分の人生を見ていくと…。
上記のようなSFとしてのアイディアが、
痛みと喜びの伴う「物語」として構築されていくところが見事。
また、この作品、「物語り方」がまた秀逸。
語り手が「あなた」へ語りかける段落と、通常の段落とが交互に進んでいきます。
この「あなた」は、語り手の娘を差すのですが、
ブライツライトビッグシティを持ち出すまでもなく、
「あなた」という呼びかけが連呼されると、(物語の枠外の)読み手の方にも、
呼びかけられているかのような奇妙な感覚がわき起こります。
そして呼びかけておいては、すっと別の段落に切り替わる。
だから読み手は語り手に引き込まれ、「何?」と、どんどん物語にのめり込む。
これだけでもうまいなあと最初は思っていたのです。
でも、この作品に関しては、単純にそれだけではなく、
読み進めていく中で、こういう語り口、構成それ自体が、
作者の上記アイディアの表現でもあるのだ、という事に気付かされます。
それに気付いたときはぞくぞくするほど興奮しました。
良質のSFというのは
「今自分が知っていると思っている世界の有り様は当たり前の物ではない」
ということに気付かさせてくれるのだなあと、
SFというジャンル自体への苦手意識も和らげてくれた作品です。
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
テッド チャン/Ted Chiang/浅倉 久志
価格: ¥987 (税込) 文庫 出版社: 早川書房 発売日: 2003/09 ISBN: 4150114587 おすすめ度: ![]() Amazon ランキング: 34848位 発送可能時期: 通常24時間以内に発送 ![]() |
アニメのタイトルに使われてたんで読んでみたんですが、SFなんてほとんど読んだことのない私にはものすごく新鮮でした。
文体は論文みたいで硬い感じがするんですがそのへんが逆にいい感じで意外とラクに読み進めました。SFというジャンルに興味がもてるいい本です。
文体は論文みたいで硬い感じがするんですがそのへんが逆にいい感じで意外とラクに読み進めました。SFというジャンルに興味がもてるいい本です。
テッド・チャンは極度に寡作な作家で、邦訳どころか本国でも単行本は一冊しか刊行されていない。その著者がSF者にどれほど評価されているかは、本書の解説に詳しく、また数々の賞を受賞していることからも一目瞭然なので、ここでは記さない。
表題作「あなたの人生の物語」、それから「地獄とは神の不在なり」からは特に強い印象を受けた。そして、巨人スタニスワフ・レムの作品を読んだときに似た読後感をあじわった。長編と短編の違いはあるが、レムと同様SFとかミステリ、ファンタジィといったジャンル小説を超越した思索の果てとしての物語である。
「あなたの人生の物語」のエイリアン、それから「地獄とは神の不在なり」の神は、レムの『ソラリス』や『天の声』と同様に全く理解の及ばない存在としてえがかれる。レムは作品でファーストコンタクトの不可能性を示し、本書においては著者が、理解できえない存在と出会って以降に人がどう変わっていくか、ということを考察し、描いている。そうした人々に注がれる著者の視線は……極端に冷徹である。まるで著者自身が神やエイリアンであるかのように。しかし、そこがいいのだ。読者は著者との差に愕然としながらも、思索の世界に引きずり込まれるだろう。
チャンはレムと同様の次元、哲学SFの極北にあると断言できる。
表題作「あなたの人生の物語」、それから「地獄とは神の不在なり」からは特に強い印象を受けた。そして、巨人スタニスワフ・レムの作品を読んだときに似た読後感をあじわった。長編と短編の違いはあるが、レムと同様SFとかミステリ、ファンタジィといったジャンル小説を超越した思索の果てとしての物語である。
「あなたの人生の物語」のエイリアン、それから「地獄とは神の不在なり」の神は、レムの『ソラリス』や『天の声』と同様に全く理解の及ばない存在としてえがかれる。レムは作品でファーストコンタクトの不可能性を示し、本書においては著者が、理解できえない存在と出会って以降に人がどう変わっていくか、ということを考察し、描いている。そうした人々に注がれる著者の視線は……極端に冷徹である。まるで著者自身が神やエイリアンであるかのように。しかし、そこがいいのだ。読者は著者との差に愕然としながらも、思索の世界に引きずり込まれるだろう。
チャンはレムと同様の次元、哲学SFの極北にあると断言できる。
数理系短篇小説集。
作家略歴を見るまでもなく書いた人間が理系の人間であることを如実に語って来るのは、物語の整然とした堅実さと、隔たった事物を結び付けるのに用いられる精緻な技巧。
ストーリーの結末が読めていても、丁寧な構成に惚れ惚れする。
また、理系知識に偏っていながらも、決して難しい理論を捏ね繰り回しているわけではなく、文系の人間にもすんなり理解できる程度であり、そしてそれが見事に活用されているのも好ましい点である。
個人的に選ぶ傑作は「ゼロで割る」「地獄とは神の不在なり」。
言語学研究者としては、表題作に関しての筆者の下調べ(或いは手持ちの知識)量に感心。
作家略歴を見るまでもなく書いた人間が理系の人間であることを如実に語って来るのは、物語の整然とした堅実さと、隔たった事物を結び付けるのに用いられる精緻な技巧。
ストーリーの結末が読めていても、丁寧な構成に惚れ惚れする。
また、理系知識に偏っていながらも、決して難しい理論を捏ね繰り回しているわけではなく、文系の人間にもすんなり理解できる程度であり、そしてそれが見事に活用されているのも好ましい点である。
個人的に選ぶ傑作は「ゼロで割る」「地獄とは神の不在なり」。
言語学研究者としては、表題作に関しての筆者の下調べ(或いは手持ちの知識)量に感心。
形而上学的なギミックで読者を煙に巻こうとしているような印象を受けた。
センス・オブ・ワンダーが無い…とまでは言わないが寡少であるような…
どこかで「きれいなイーガン」と言われていたが、その綺麗さゆえか
物語・設定に深みがない。表題の構成にも疑問がある。
地味な話が好きな人には向いているのかもしれない。
センス・オブ・ワンダーが無い…とまでは言わないが寡少であるような…
どこかで「きれいなイーガン」と言われていたが、その綺麗さゆえか
物語・設定に深みがない。表題の構成にも疑問がある。
地味な話が好きな人には向いているのかもしれない。



