筒井氏が断筆宣言をした後に綴ったエッセイを纏めたもの。全体で9章から成るが、中心となるのは1章の「現代世界と文学のゆくえ」と2章の「表現の自由に関する断章」であろう。
1章の「現代世界と文学のゆくえ」では、常に時代の最先端を行く著者が"果たして文学に未来はあるのか"というテーマを根幹に据え、筒井なりの分析と展望を語ったもの。資本主義下における文学の存在意義、著作権の問題、隠蔽された差別の問題などを中心に文学表現の可能性を追求する。特にSFの主題において「越境」と「エイリアン」がキーワードであり、社会における被差別者である「エイリアン」が本気で「越境」するテーマに可能性を見い出す。また、ドーキンスのミーム概念に関連して、"文学と死"の概念を論じる辺りも面白い。本章の節中で筒井の専門分野である「SFと虚構性」を論じているのも興味深い。
2章の「表現の自由に関する断章」は断筆宣言の元となった「てんかん騒動」の顛末を綴ったものだが、言葉狩り、表現の自由の問題を扱っていて、文学の本質に迫る内容。「日本てんかん協会会長」の抗議文も載っていて興味深い。
後半は軽めの内容になっていて、他の作家の新刊本への推薦文(これらの本に可能性を見い出しているのだろう)、畏友への追悼文(これはシミジミとしている)などが載っている。
中身の濃いエッセイなので、とても全部は触れられないが、筒井がこうした纏めた形で文学論を発表するのは極めて珍しい。筒井ファンならずとも、文学愛好者必読の傑作エッセイ。
小説のゆくえ (中公文庫)
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一見、何を考えているのかさっぱり読者には理解できず、人によっては「狂人」扱いするかもしれないが、実際の筒井康隆は冷徹なほどに事物を眺める理知的な人物である。まあ、俳優でもあるので「狂人の作家」を演じている、と言ったほうが正しいかもしれない。
で、この本でございますが、え〜、前半は重厚な内容です。相当程度濃厚な文学理論を書き上げており、筒井康隆という作家の知性の一端が伺えます。そら単なる「狂人」だったら『虚航船団』『残像に口紅を』『虚人たち』なんて作品は生み出せません。論理的に文学を考察し、そして熟練した筆力でもって書き上げる。この人、一線級の文学者ですよ。もう少し若ければ大学の講師なんかすれば相当凄いことになったんじゃないですかね。まあ、この人、原稿料だけで充分すぎる収入があるんで、ありえない話ですけど(笑)
ただし、後半は色んな所からのスクラップみたいになっている。ちょっとそこは残念。
で、この本でございますが、え〜、前半は重厚な内容です。相当程度濃厚な文学理論を書き上げており、筒井康隆という作家の知性の一端が伺えます。そら単なる「狂人」だったら『虚航船団』『残像に口紅を』『虚人たち』なんて作品は生み出せません。論理的に文学を考察し、そして熟練した筆力でもって書き上げる。この人、一線級の文学者ですよ。もう少し若ければ大学の講師なんかすれば相当凄いことになったんじゃないですかね。まあ、この人、原稿料だけで充分すぎる収入があるんで、ありえない話ですけど(笑)
ただし、後半は色んな所からのスクラップみたいになっている。ちょっとそこは残念。



