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その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)
ジュンパ・ラヒリ小川 高義
価格: ¥2,310 (税込)

単行本
出版社: 新潮社
発売日: 2004/07/31
ISBN: 4105900404
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 211734位
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珠玉の長編
ラヒリの前作『停電の夜に』は、短編集であるにもかかわらず、読後感は質の高い長編を読了した満足感でいっぱいになるものだった。

今作『その名にちなんで』は、アメリカで暮らすインド系の主人公ゴーゴリの生い立ちと成長をめぐる壮大な長編小説。ゴーゴリというのはロシア系の姓なので、主人公は自分のファーストネームが外国では姓であることに苛立ちと嫌悪感を感じ始める。物語は、親がこの名をつけた思いと家族の肖像をめぐって展開する。

短編小説家に長編は荷が重いのではないかと思っていたが、その懸念は見事に裏切られた。完璧なまでに。壮大は長編にもかかわらず、珠玉の短編を思わせるような機微の変化や心象風景。都会的でありつつも、軽薄とは正反対な本格的な名作が小川高義の名訳で読めることが素晴らしい。
名前を呼ぶ
インドとアメリカの二つの大陸にまたがって物語られ、過ぎてゆく日常。主人公はゴーゴリと幼名されその名に執着していたにもかかわらず、思春期にはとにかくその名を嫌がり、改名(といっても元来用意されていた名だ)してしまうのだ。しかし「ゴーゴリ」という名にまつわるお話はエピソードの一つに過ぎず、インド式ホームパーティやアメリカのクリスマスの儀式の様子など様々な日常についての視点が、父だっだり母だったり、ゴーゴリだったり、恋人だったりする。万華鏡をゆっくり回してみるような感覚で物語にのめりこんだのだった。
善人でも悪人でもないごく普通の一家族が、大陸をまたにかけて、ごくごくあたりまえに暮らしている。その自然さがとても力強く感じた。
一生ついてまわる名前に愛着をもっている人はどのくらいいるのだろう。大抵、親から、または祖父母から授かったその名を。
ストーリーができ過ぎて、物足りなかった
この話に起承転結があるならば、「起」と「結」は面白く読み応えがあったが、「承・転」の部分は、作者はアメリカ人なのだと認識させられるアメリカによくある典型的な説明だったり、インド系移民を美化しすぎたり、全体的なスピードを落としてしまったように思う(息子がアイビーリーグ大学に行ったり、白人のみと交流があるとか)。期待値が高かったため、物足りない読後感だったが、母親の心情はよくあらわしていたと思う。
ゴーゴリ君の「冒険」に拍手!!
前作を読み、ジュンパ・ラヒリを「短編の名手」と評した私です。今回は長編だったわけですが、その短編の名手の長編は実に見事で、読み終えた後、作品に向け、作者に向け、そして作品の最後にまるで「自分探しの旅(冒険)」に第一歩を印すべくゴーゴリの本を開いたゴーゴリ君に拍手を贈りたくなってしまいました。
私自身が、ベンガル地方の中心地であるカルカッタに駐在していた為、同地出身であるアショクとアシマの二人の暮らし、考えが手に取るように分かりますし、ベンガル語を話すアメリカ人として育ったゴーゴリ君が見た両親の故郷カルカッタについても多くの共感を覚えました。最高だったのは、ゴーゴリ君が、恋人のお父さんと交わすカルカッタをベニスになぞらえた会話の下りです。読んでいて自身がひっくり返って笑い、その直後に食事をしたインド人二人と駐在経験のある日本人一人にその部分を紹介してひっくり返らせてしまいました。カルカッタのことを何も知らないと、ここは読んでても全然何のことか分からないだろうなあ・・・。でも、こんなに心の底から笑えるギャグ(ユーモア)には、なかなか出会えないと思います。この作品の文学的深さが「きれいに地表に現れて来た部分」であるように思えてなりません。
でもこのインド人(ベンガル人)達は何で、子供の「呼び名」に(こういう習慣にもインドに住んでると慣れるんですけどね・・・、その意味で、この作品はまず外地居住インド人=NRI達に絶賛されるはずだという気がします)ロシア人の作家の名前なんかを付けたのか。お陰でその子は微かなコンプレックスを抱くようになってしまうのですが、インド人のインテリがベンガル州を行く夜行列車の中で英語版のゴーゴリを読んでるって言うのも、一度インドに住んだりすると、何となく想像出来てしまうのです。
こうやって書いてくると「予備知識がないと読めない」ように思えてしまいますが、そういうのがなくても素晴らしい作品なんじゃないか、と私は信じています。こういう風にして私達は(別にインド人でなくても、アメリカ居住のベンガル人でなくても)、けなげに地道に、そしてちょっぴり悲しげに、生きて行くものだと思うのです。親から命を貰い、名前も貰い、ある種の宿命みたいなものも貰いながら・・・。
女性にぜひ読んでほしい
新聞の書評を読んで何となく手にした本ですが、それまでに読んだことのないタイプの作品でした。風景や人物の細かい描写、そしてゆるやかに、でも確実に動いている主人公の心情は、女性だから書けるものだと思います。女性として共感できることがたくさんありました。ドキドキハラハラの劇的な展開があるストーリーではありませんが、穏やかな満足感が得られます。



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