美しい魂
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不遇の作曲家、野田蔵人と母キリコの死後、カヲルは商事会社を営む常磐家に引き取られる。カヲルは少年時代から慕っていた麻川不二子との恋を成就させるべく彼女の後を追って、アメリカへ旅立つ。カヲルへの思いを断ちきれずにいる姉のアンジュは、カヲルと不二子の恋の妨害を企む。アメリカ留学後、国連の職員として働く不二子。不二子の心を射止めるべく歌うことに目覚め、稀代のカウンターテノール歌手として才能を開花させるカヲル。ふたりの恋はすれ違いを見せながらも進行していくが、清仁親王が不二子を見初めるに至り事態は一変する。
未来の天皇の最有力お妃候補の恋人であるカヲルは国家にとって存在してはならない人物であり、カヲルと不二子の恋愛自体が禁忌となる。ふたりの恋は国家の大本さえ揺らがしかねない政治性を帯びるものとなった。親王の求愛を拒み続ける不二子だが、カヲルは危険を冒しメディアや国家の監視の下に置かれることになった不二子と逢瀬を重ねる。右翼からの暴力に晒(さら)されるカヲル。カヲルの恋の終わりと連動するように没落する常磐家。不二子はついに親王のプロポーズを受け入れる。最後の逢瀬で不二子と不変の恋を誓い合ったカヲルは、不二子との約束を実現すべく「美しい魂」の行方を見届ける旅に出る。
そのような経緯が、ふたりの永遠の恋を語り継ぐべく選ばれたカヲルの一人娘である文緒に向けて「君」という二人称で語りかける語り手によって語られる。蝶々夫人に始まる劇的な恋愛模様が、歴史とリンクしながら勇壮な物語を織りあげていく。かくして「二十世紀を恋と音楽に生きた一族の物語」は、最終章『エトロフの恋』へと受け継がれていく。(榎本正樹)
恋に生き、恋に導かれた複雑な背景を背負った男性の物語と言えばいいでしょうか。主役の男性は随分と子供っぽいですね。相手に受け容れられる事を願ってばかりでは彼の恋の成就は難しいかも…とも思いました。まず自分が相手を受け止める度量と勇気を持たないと二人の物語は前には進まないのではないでしょうか。
三作目を呼んで結末を見届けようという気にさせられるひたむきで不器用な恋物語ですね。
恋が持つあらゆるいらただしさが、主人公カヲルには存在している。まるで恋愛の大河ドラマのようで、読み応えは十分。
けれど物語の象徴的な場所の景色が常に浮かんできて、恋人不二子の姿がその窓に見える気さえするほどの設定は、想像力を掻き立てる以上に週刊誌的興味が起こってくる。



