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ダンシング・ヴァニティ
筒井 康隆
価格: ¥1,470 (税込)

単行本
出版社: 新潮社
発売日: 2008/01
ASIN: 4103145293
おすすめ度:5.0
Amazon ランキング: 45062位
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5小説における経歴総和の試み
美術評論家の「おれ」が語る、無数にありうべき半生の物語。読み始めて2頁目で思わずニヤリとさせられる──御大、またやってくれましたね、と。初っ端からぶっ壊れたかと見紛うような、レコードの針飛びのように繰り返されるシーケンスは、しかし微妙に細部を異にしながら「おれ」の人生に蓄積されていく。確信犯的に執拗に繰り返されるその手法が狙うのは、量子論に於いてファインマンが提唱した「経歴総和法」の、文学への転用という新たな試みと解釈できそうだ。夢もうつつも妄想も全て現実である──そう規定して展開される「おれ」の奔放な物語は、それを多角的な視点で捉えるために様々な小道具が用いられており、一見何のために登場するかわからないフクロウやコーラス・ガールもそれぞれが「おれ」のイドでありアニマであったりするのかも知れないが、そんな読者の得手勝手な解釈も全て包容して余りある面白さがこの作品には詰まっている。提示された全ての経路を積分したようなラストシーンはそれだけにずしっと胸に応える。久々の衝撃作。
5面白い面白い面白い:考えるのはそれから
筒井康隆健在。この小説そのものは現象として極めて特殊な仕上げがしてあって、それが帯文句の「乱丁にあらず乱調なり」という状態を作り上げているが、その意図するところは実に確固として動かない。何よりもこの小説は面白く、登場人(?)物それぞれの魅力と展開処理の意外性を味わっている間に読み終わってしまう。読んだあとでいろいろと考えるところが多く、未だに脳裏を登場人物たちとあの歌がいっかな離れていかない。
作品が作品なので、内容に亙るレビューは無粋どころか犯罪に近いと思う。これ以上は、読んでみて下さい、というしかない。ただ、私は筒井作品の殆どを読んできたが、衝撃の度合いでこれに比肩するものは「脱走と追跡のサンバ」以外にない。
5頭がおかしくなりそうな
長年の筒井ファンなので筒井さんらしいのですが、私は読みながらのめりこんでしまうタイプなので、これは危険な書物かもしれません。ストーリーの変遷が非常にリアルで、共感できてしまうのです。うっかりするとずんずん入り込んで、妄想を追体験してしまいます。危ない危ない、何とか読み終えてほっとしています。筒井さん、私の親ぐらいの方ですが、最近の作品どれもいいですね。
4ゲーム的リアリズムの実践形か
 読み始めて、なんじゃこりゃぁ!と戸惑った。乱丁ありまくりではないか、というより全ページが乱丁で出来ているのだ。「美は乱丁にあり」という駄洒落が浮かんだが、筒井もついに「壊れ」たのか?ともちょっと思ってしまったのだが、いやいや、そんなもんじゃない。
 そう、つまりこれは方法・手法として、何度も何度も同じ場面を、しかし微妙にディテールを変化させつつ繰り返すというやり方なのだ。これは明らかにコピー&ペーストを多用した執筆方法ではある。コンピュータがなければ書き得なかった作品と言っていいかも知れない。それぞれの場面は、かなり極端な現実離れしたスラプスティックなストーリーが続く。人が宙に浮いたり、白いフクロウが覗き込んでいたり、ヤクザが家の前で喧嘩してたのが、相撲取りになったり、自衛隊になったり…これはいかにも筒井らしい世界だ。個々の場面はそれなりに面白く楽しめる。
 思い出したのは中学生の頃読んだ筒井初期の短編「しゃっくり」だ。何度も同じ時間帯が繰り返されるのだが、一見非常に似ている。しかし、このしつこいまでの繰り返し(と言うより変形、いやむしろ変奏というべきか?)の意図は、結末に至って明らかになる。なーるほど、そうなのか!と感心した。ネタばれ厳禁なのでこれ以上は書けない。筒井作品の中でも重要な位置づけになるのではないか?とは言える。
 ところで、東浩紀の「ゲーム的リアリズムの誕生」(講談社現代新書)という本があるが、これは東が筒井に出された宿題への提出答案として書いたものだとあとがきにある。その本が、今度はこの小説の末尾の参考文献の中に載っている。ということは、これがまた東に対する回答なのかも知れない。確かにシュールではあるけれども、何度も繰り返されるところなどは、リセットして再プレイするような〈ゲーム的リアリズム〉なのかも。
5Copy & Paste Novel
 決して乱丁本ではない、どちらかといえば乱調本。文豪筒井康隆が描く<Copy & Paste Novel 2008>である。文豪は、本書をMACで作成した。この痛快さ、これでもか、これでもかと繰り返すことの美しさ、永久不潔かと思われるコペルニックスも激写した地球回転の優美さ。可憐かつ健気なビューティー・デュオの二人。
 時空を超えた江戸真っ盛りの浮世絵探索軽はずみ旅行の可憐さ。おなじみの<三和土>も健在。みんな元気、ボクも元気である。小ぶりの尻を持つセクシー秘書女史、嗚呼。本好きにはたまらない書棚、本棚、彼らの語り掛けに思わずお漏らし至極、感涙絶対。
 
 日本文学界が生んだ稀有な小説に、悶絶必至、阿鼻叫喚、疾風怒涛のシュトルム・ウンド・ドランク状態、天網恢恢、七転八倒、ああ、これでもかの四字熟語。マン人にお薦めできる好著・良書かくあれど、こればっかりは外せないサスペンス・アドベンチャーである。

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