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若い芸術家の肖像 (新潮文庫)
ジェイムズ ジョイスJames Joyce丸谷 才一
価格: ¥620 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1994/03
ISBN: 4102092021
おすすめ度:3.5
Amazon ランキング: 55266位
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このレビューにこだわらずに
 名作、ということになっていますが、わたくしにはどうもピンと来ませんでした。わが愛読する伊藤整も、この作からの影響で「若い詩人の肖像」をものしているというのに・・・(ただし、この作も同様にあまり感心しない)
 いわゆるビルドゥングス・ロマンに分類される、半自伝小説ということになっています。ピンとこないひとつの理由は、宗教との関わりということもあるかもしれません。また当時のアイルランドの、イギリスとの複雑な関係もひとつの理由になっているのかもしれません。

 こう書くのは矛盾しているかもしれませんが、わたくしの評価にはこだわらずに本作を読んでいただければ、と思います。訳については原文と対照もしていないので評価不能ですが、日本語としては決してわるくないように思いました。

時に難解だが面白い
『ユリシーズ』で知られ、今年ユリシーズの日100周年だったジョイ
スの小説。半自伝的、とされ、『ユリシーズ』の2,3年前を描いてい
る。
アイルランドの中産階級に生まれた(後に没落)スティーブン・ディー
ダラス青年が、幼児~大学まで成長していく姿を描く。最初は童話っぽ
い幼い文体で始まり、スティーブンの成長に合わせて文体も複雑になっ
ていく。文体が主人公を表しているのである。
寄宿制学校で受けた侮辱、先生への不信感、などなど、成長期の経験や
気持ちをうまく捉えている。ジョイスは子供の頃のことも忘れていない
人だったのでしょう。学校によって形成される鬱屈した人間性を見事に
描写している。
ラテン語も多く登場し、一寸インテリっぽいし、カトリックやアイルラ
ンドの問題も多いが、それでも共感できる部分は多いと思う。
大学生になって美学論をぶるスティーブンの頭の良さには感心させられ
ると同時に、読者も「美とは何か」と考えさせられる。キリスト教につ
いて延々と語られる場面では、逆に、部外者として客観的に教義を考え
ることができ、信仰の深さ、不思議さを感じる。
ところどころ難しいが比較的読みやすいジョイス作品だ。
青春小説として楽しめた
 ジョイスの半自伝的小説とか、神話的手法とかいうことで語られる作品だけど、そんなこと文学者に任せておけばいい。肝心なのは、青春小説として面白い、ということ。今世紀はじめのダブリンに生まれたインテリのカトリック教徒の気持ちなんか、ぼくには想像できないところも多かったし、長々と繰り広げられる神学論とか、美学論とかはっきり言って退屈だけど、淡い恋心とか、性の悩みとか、友情とか、夢とか、青春時代に誰もが悩んだ普遍的な問題に主人公が格闘しているとき、ぼくたちも主人公と一緒に悩み、語り、泣き、そして笑うことが出来る。それはすばらしい小説である証拠なのだ。
ジョイスは、ないだろ
ジョイスのユリシーズを二十世紀文学の最高峰とする人は少なからずいますが、それはインテリ階級に属する人だけです。ジョイスの本は、多くの人にとって面白くないと思います。
特につまらない点は、ダイナミズムがないことだと思います。
アイルランド文学の一ジャンルを築いた名作
日本でも映画公開されて各方面で話題を呼んだ「アンジェラの灰」をはじめ、いまでも出版されているアイルランド作家の小説はこのジョイスによる「若き芸術家の肖像」を下敷きにしたものが多いと思う。酒浸りの陽気な父親像、宗教の矛盾、経済の没落、イングランドに対するコンプレックスなどなど。言い換えれば、アイルランド文化の根底にあってかわらず受け継がれている伝統なのかもしれない。ジョイスの少年、青年時代のアイルランドはカソリックの教義で厳然とした道徳律が支配的な社会で、宗教的な信仰を捨てて芸術に献身するのは受け入れがたい行為だったようだ。自分の出生の土地と文化から遠ざかりたいという欲求と、それを引き止めようとする力の葛藤はこのジョイスの書くダブリンの風景にも見出せ!る。現代の作家にまで多大な影響力を持つ名作だと思う。



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