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林檎の樹 (新潮文庫)
ゴールズワージー渡辺 万里
価格: ¥340 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1953/08
ISBN: 4102088016
おすすめ度:4.5
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若さゆえの選択
水彩画のような情景のなかで、物語が進行して行く。まだ若い青年が旅先で出会った少女に恋し、惹きつけられる思いのなかで、永遠を誓ってしまう。しかし、誓った翌日には、別の魅力的な少女に引き寄せられ、昨日の出来事がまるで夢のように感じられ、現実の目の前の少女を選んでいくことになる。

そのとき、その瞬間、それが自分にとって正しいと思えるような選択は、損得を越えたものがある。しかし、目の前の現実のなかでより魅力的なものに素直に惹かれるのもまた若さゆえの選択なのだろう。

振り返って傷ついたり傷つけたり、思い出しても悔いる経験だが、時間だけがそのこころを癒してくれるのかもしれない。
多面的な愛の物語
初老の主人公が2人の女性を同時に愛した青年期を回想する場面から
物語が始まります。若さゆえの身勝手とも言える2人の女性への憧憬は、
時に美しく、時に哀しく、青年の心を思い悩ませます。そして、時は
愛の選択を迫ります。身分の異なる2人の女性、どちらかを選ぶことで
自分自身の人生も大きく変わる選択を余儀なくされます。

そして初老となった今、その選択の結果を知ることになるのです。
愛は脆くもあり、崇高でもあり、純粋でもあり、偽善的でもある。
そんな詩的な感情にさせてくれました。自己保身的な愛や、欲に満ちた
愛は、己の愚かさを諭してくれるのではないかと思いました。

香り高い作品
ノスタルジックで抒情的な情景描写が美しく、香り高い。
青年の甘美にして情熱的な恋、そして、一旦冷静に客観的に自分のその情熱を
見つめ直したとき、青年は理性と情熱の葛藤に思い悩む。
若い男女が燃え上がる情熱で突っ走っていって、ともすれば悲劇に終わり
がちな物語を、青年自らの目で客観的に考えさせるところが新鮮。

文体もロマンチックで格調高い作品です。

心が痛くなる、やるせない物語
銀婚式の日、思い出の地に赴いた主人公アシャーストは、ひとりの少女との恋に涙する。
戻るに戻れない、望んでも到達することができない林檎の樹。
心が痛くなる、やるせない物語です。



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