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戦争と平和〈1〉 (新潮文庫)
トルストイ工藤 精一郎
価格: ¥820 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1972/03
ISBN: 4102060138
おすすめ度:4.5
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歴史の中で生きると言ふ事
 2001年の9・11テロ以後、私は、不意に、自分が歴史の中に生きて居る事を意識する様に成った。私だけではない。私は、私の知る、或る元左翼活動家の人物が、9・11テロの後、生まれて初めて、自分が歴史の中に居ると言ふ実感を持ったと言ふのを聞いた事が有る。(してみると、60年代、70年代の学生運動は、矢張り、「歴史」ではなかったのだろう。)どうやら、私を含めた多くの戦後生まれの日本人は、生まれて以来、自分が歴史の中で生きて居ると言ふ実感に乏しい人生を生きて来た様である。
 9・11テロが起き、不意に自分が歴史の中に居ると感じ始めた時、私は、その数年前に読んだこの小説(『戦争と平和』)を、自分の時代の鏡の様に感じ始めた。−−この小説が描くナポレオンのロシア遠征前後の時代と、9・11後の世界は、多くの面で似て居ると、私は思ふ。
 私には、この物語の冒頭の、アンナ・シェーレル邸での夜会における人々の会話が、9・11テロ直後の日本の光景に重なって見えてならない。そして、この第1巻において、始めは遠くに感じられた戦争が、次第に、身近に迫る中で、人々が体験する不安や高揚感が、9・11後の世界の感情と重なって成らない。−−これが、歴史の中で生きると言ふ事なのだろう。−−今こそ、『戦争と平和』を読むべき時代である。

(西岡昌紀・内科医/9・11テロから5年目の日に)
内容はともかく
 内容は他の方のレビュー通り、よいものです。あんなに多くの人物が出て
くるのにも拘わらず、各人の人生・生き様がとても豊かに書かれている。私
の頭では一度読んだだけでは理解できない理論的な個所はともかく、物語は
面白かった。時間を置いて、最低あと一度は読もうと思う作品。
 ただ一つ、これだけは…
 それは内容とは関係ないことで、本自体の読みにくさです。見開き43字×
39行。印刷の文字がなんとも古臭く、小さく、しかも薄いところがあって、
時間を忘れて読んでいた頃には目がチカチカする…。目には優しくない本だ
と思いました。こんな本を読んでいたらもっと目が悪くなるのではないかと
思ってしまうほどに辛かった。それでも何時間も(一日中)読ませてしまう内
容。この本を読まれる方、きりのいいところで休憩を取られることをお勧め
します。でも取らずに読みたくなります。
 そんなわけで星は四つとなりました。
情念の力
1812年のナポレオンによるモスクワ進入の史実を中心に、18世紀初頭の激動のヨーロッパを解釈しようとする試みが本書ではないでしょうか? 同じキリスト教徒であるヨーロッパ人が、血で血を洗う戦争になぜ明け暮れたのか、トルストイのそんな問題意識が執筆のきっかけになっているように思われます。

この本には、きらきらと光る人間観察の断片が、ただただ無尽に、満遍なく散りばめられています。それに比べると、現代の小説(一般化しすぎていることを了解しつつ)は、たった一つの断片をモチーフに、ストーリーを成立させているケースが多いように思います。物語の書きかたの手法が変わってきているのでしょう、2時間のうちに何か分かりやすいメッセージをこめなければならない映画の文法と重なる部分があるのかもしれません。俗に大作といわれる作品と、現代の小説の大きな違いは、そんなところにもあるなどと考えさせられました。

歴史小説としても素晴らしい内容ですが、それ以上に、平時と、戦時つまり極限状態における、人間のプライオリティの変化や、登場人物一人ひとりの善悪の二面性など、複雑な人間心理に達しているという意味で、この小説は普遍性を獲得しています。状況によって、善にも悪にも、強くも弱くもなる個々人の長所と短所をみごとに描いていきます。そしてトルストイは、人びとのなかにある、理屈の介在しない情念(パッション)に注目し、その圧倒的な力を何よりも評価します。

全編を通して、トルストイはナポレオンという個人の情念に歴史の流れを見る歴史家の視点を批判し、始まった戦争がそれ自体で生命力をもって、その望む方向性に転がっていくスピードを描きます。それは、「必然」と「自由」という背反する二つの力を見つめ、そのバランスの上に成立する歴史・人間の営みを俯瞰できる、稀代の小説家トルストイならではのものでしょう。4冊と長いですが、読みにくくはないです。

これ以上の文学作品はありません。。
トルストイの最高傑作であるけれども、読書経験や人生経験が浅い人、興味の対象を世界的なスケール観で持っている人でないとは受け付けてくれないところがあります。あと戦争の描写もとても多く細かいので、女性だと「アンナカレーニナ」のほうが好きだと思うかもしれません。
また、エピローグの第2部のように哲学論文のようなところもあり、読後感を損なっているように思うかもしれません。(ここには作者の述べたかったエッセンスがあるのですが、飛ばして後日、気が向いたら読んでみればいいと思います)
しかし、この作品の壮大さは作者が私たちに神の目を貸してくれているかのようです。時間の流れと空間の壮大さ、人々の営みを見事に描ききっています。登場人物が多すぎるをいう人がいますがそれがまたこの小説をスケールの大きいものにしているともいえます(このスケールで2.30人しか出てこなかったらかえって不自然だし、それぞれ皆、魂の入ったすばらしいものです)。主だった人以外は一度きりしか出てきませんし、自分で相関図を作ったり、歴史書や地図をみながらのんびり読めばいいと思います。(中身が濃いのでほかの小説より読む時間がかかります)物語というよりも、現実に地に足をつけて立っている人々の20年分ぐらいの経験をさせてもらったような感じです。繰り返し読みたくなる傑作ですので是非挑戦してみて下さい。
涙が出てしまった
とある老公爵が亡くなる際に、娘に泣きながら謝るシーンがある。
電車の中でそこを読んでいて、不意に涙が出てきてしまった。
あとからあとから涙が出てきた。
恥ずかしくて、次の駅で思わず降りたのを覚えている。



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