多くの男を虜にしつつ、自らは決して彼らの一人一人には縛られることなく、しばしば平気で男を袖にするカルメンの姿は、その妖しい魅力で(恐らく男女を問わず)読む者を惹きつけるでしょう。舞台となっている酷熱のアンダルシアの荒涼とした風土の中にあって、情熱ほとばしるカルメンの姿は鮮やかな印象を残します。女性はもちろんですが、男性でさえも、彼女の恐るべき行動力と、自らに微塵も後悔しない彼女の意志力に、憧れを抱いてしまうかもしれません。
なおこの「カルメン」は、最近ではTVアニメ『明日のナージャ』の内のあるエピソードで、非常に上手くアレンジされた形で生かされています(どのエピソードかは、ファンの方なら恐らくすぐにお分かり頂けると思います)。『ナージャ』ファンの方、特に上記のエピソードのファンの方は、一度読んでみられてはいかがでしょうか。
表題作の他に「タマンゴ」「マテオ・ファルコネ」「エトリュスクの壷」「オーバン神父」「アルセーヌ・ギョ」の五編が収録されています。いずれも「短篇の名手」と言われたメリメの名に恥じない名短篇ばかりです。特に「マテオ・ファルコネ」には、その短さからすると信じられない程の迫力があります。



