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恋 (新潮文庫)
小池 真理子
価格: ¥740 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 2002/12
ISBN: 4101440166
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 15876位
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心に残こってる・・・本です。
30年生きてきて、読書をほんとに始めたのはこの一年間です。まだ50冊は超えていないだろう・・読書数の中で、本当に忘れられない・・という作品はこの「恋」と外国の作家の「アルジャーノンに花束を」のみです。大好きになる本はたくさんあるのだけれど、忘れられない・・・そんな感慨深さを与えてくれるもの・・・ってあるようで実際に会えるヒット数は少ないのかもしれません。そんな感慨深い作品だったのに私は本のタイトルだけ覚えていて作家名を間違って小池真理子さんではなく林真理子さんで覚えていました・・・。今、思い返し、この本のレビューを書いておきたい・・と思い検索して、小池真理子さんだったのか・・と思ったところです。なにげなく図書館で借りて読んだ・・この本。内容もしっかり覚えていて「うっかり」忘れて同じ本をてにすることは絶対ない。この本を見るときには、読んだ内容までしっかり蘇って、それと知って手にとって見る・・・そういう本です。
恋に酔う
学生運動で大学が揺れる中、大学生の布美子は報酬の良いアルバイトの紹介を受け翻訳の助手を始めた。雇い主である大学教授の信太郎と妻の雛子の出会いをきっかけにして運命の歯車が狂い始める。
倒錯的な感情に囚われて渇望した布美子の心理模様は圧巻で甘美さに高揚させられる。
小池真理子の世界が集約した作品
直木賞受賞作であり,
作者の小池真理子さん自身,この小説を着想したときのことを
「神が降りた」と言っている。
この作品のプロット,たとえば,作中小説を背景音楽のように使ったり,
核となる事件から何十年後かの様子を第三者に語らせる手法は,
後の彼女のほかの小説でも再び使われており,
彼女の小説世界が集約し,凝縮したような作品である。
恋愛の対象となる男性が,理知的で,病み疲れたような美しさを持っているのも
いつものとおりだなあ,と満足させる。

内容は,作中小説「ローズサロン」さながら,退廃的・官能的な性の営みを繰り広げる
主人公たちの関係が,ある日,その1人が現実的な普通の恋愛に目覚めたことから
崩壊する,というもの。
そりゃ,退廃的・幻想的な世界はいつかは崩壊するじゃないか,それなのに
幻想世界をいつまでも現実のものとして維持したいと願い,しがみつこうとするあまり
気が狂ったような行動をとったこの主人公はいったい何者だ,
とやや冷めた目で見てしまい,★をひとつ減らそうとする私は,
この小説を読む資格がなかったのかもしれない。
しかし,そう言いながら他方でこの幻想世界の結末の付け方に感服もしている。
この小説の設定は,70年代の学生闘争の時代であり,
前半,主人公の女子大学生の周囲にも,革命マルクス運動だのの理想世界を夢見て闘争する
学生がたくさん出てくる。
その学生運動を終結させ,現実に引き戻した事件が浅間山荘事件であり,
同じ日に,主人公の狂気の行動により,主人公らの退廃世界も終結する。
このあたりの二重唱のつむぎ方はとてもうまくて,小説としての完成度が高く
さすがだなぁと思った。


幻想と狂気の物語

 最近、『望みは何と訊かれたら』を上梓された小池真理子さんだが、その原点はまさにこの『恋』にある。正直言って、小池さんと私は、ほぼ同世代に当たり、幻想と狂気が一部の人々(学生等)を支配していた1970年代前半、すなわち「或る種の幻想に浸っていられた時代」(本書P.310)をくぐり抜けてきた訳だ。この幻想と狂気を一組の夫婦と女子大生の関係性に布置、仮託し、出来上がった作品が本書であろう。

 ロマンチックな題名とは違って、凄惨なラストを迎える小説であるけれども、幻想と狂気は混沌を生み、その混沌そのものを愛し、恋するが故に、女子大生・矢野布美子は己の「生(性)の秩序」たらしめようとした。しかし、本来的に混沌を秩序と擬制することは不可能であり、結局、「ありふれた生(性)の秩序」の現出によって、「混沌とした生(性)の秩序」は終止符を打たれ、悲劇的な幕切れとなってしまうのであった。

 「ありふれた生(性)の秩序」に「混沌とした生(性)の秩序」を対置しようとした矢野布美子の想念は、あの時代、ブルジョア的な日常性=関係性の否定を試みた<革命運動>のそれと類似しなくもない。<革命運動>も、それ自体、混沌を目指すものだからだ。ただし、秩序とはなり得ない。そして秩序も、実は共同的な幻想と排他的な強制とで成り立っており、それ故、異端的な幻想と破壊的な狂気を徹底的に排除するのである。

女性の視座
一組の夫婦とそこに入り込んだ女子大生のある意味「退廃」した生活の中で少しずつ歪ができ、ある男の登場で、その関係が崩壊する物語。崩壊したがある意味、夫婦も女子大生も「再生」の希望が描かれている。人間は「退廃」「官能」を突き詰めるとどうなるか?どこかにやはり「道徳」がその突き詰めていく作業を邪魔する。だからこそ人間であるのだと思う。その先には「清」が待っている。ある意味突き詰める作業を行ったからこそ、その境地にいけるのだが。そのプロセスを退廃した雰囲気を行間に滲ませながら、物語はすすんでいく。直接的な表現は少ないが、すごくエロティックである。恋愛は奇麗事では済まされないのである。



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