われらの狂気を生き延びる道を教えよ (新潮文庫 お 9-9)
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密度の濃い作品群である。ひとつひとつの章は残酷でユーモラスな印象を残し、尚且つ最後の章で一応オチがついている。それを「救い」と感じるか「救われない」と感じるかは読者に委ねられているのだろう。大長編ではないが読後感の重さはそれに匹敵する。お読み得の作品だと思う。
「死者の奢り」、「飼育」などのデビュー作群では、救いなき逼塞状況を描く作風が目立った大江氏も、『個人的な体験』(1964年)以降は希望をうかがわせるオチをつけるようになり、その暫定的なハッピー・エンディングこそが大江文学の魅力のようです。
けれども、『万延元年のフットボール』と『洪水はわが魂に及び』とのあいだで、それらに収まりきらなかった作品が集められた、1969年初版の本書は、そのタイトルのとおり、われらの狂気を生き延びる道をつかめないまま終わる短編・中編の集成です。自分の文章やブレイクからの引用や「ギー」、「イーヨー」というキャラの登場はもちろん初期には見られなかったことですし、相変わらず難解ですが、本書のテーマは初期の大江文学が提示した救いなき世界に通じるもののように感じられたので、本書を興味深く、そして懐かしく読むことができました。



