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流れる (新潮文庫)
幸田 文
価格: ¥460 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1957/12
ASIN: 4101116024
おすすめ度:5.0
Amazon ランキング: 73869位
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5染香の意地
 衛星放送で成瀬監督の「流れる」を観て以来、原作を読もうと思っていた。映像の印象が小説を読みやすくした。映画では杉村春子が年増芸者(染香)をたくみに演じていた。作中の人物そのものである。作者の文章は女性らしいしなやかさがあるが、その精神は何か、男らしいものを感じさせた。当時の女性と労働と報酬について、作者なりの考えが垣間見えた。
5著者の実体験
幸田文さんに関する他書を読んで驚いたのですが、この、芸者置屋で住み込み女中として働いたというのは著者の実体験であったそうです。作家として有名になりつつあり、傍目には順風満帆であるかのように見えた40代の半ばに、書くことに自信をなくして、中華料理屋、パチンコ屋などいろいろなところに職を求めて歩き回ったといいます。偉大すぎる父・露伴の名から逃れたいという思いもあったのでしょう。
私は初めて読んだ時にはこの小説はまったくの虚構なのだと思っていました。しかしそういわれて読んでみれば主人公の梨花は、落ちぶれはしたものの教養のあるしっかりした女性で、頭も働き字も達筆、料理も上手と、まさに文さんその人だという気がします。女中でありながら小説の最後に抜擢されて、新しい事業を始める責任者におかれるというサクセスストーリーに充分見合う女性であると思います。
小説はそこで終わっていますが、梨花はその後どんな新しい人生を歩んでいったのでしょうか。
5じつはオールウェイズ三丁目の夕陽のころのお話
本作を原作とする成瀬巳喜男監督映画「流れる」は評者のフェイバリット作品のひとつ、成瀬作品らしいえもいわれぬ儚い情緒が全編をおおいつくす傑作として何度も繰り返し見てきました、映画は2時間弱ですから本書を実に見事に脚色したものだろうことは当然なことで、映画らしい省略により、見れば見るほどこのシーンのこの仕草は何をしているのだろうか、といった疑問が繰り返される結果となり、偶然、古書を入手できたので読んでみました、

いろいろと賞を受けたことも肯ける見事な小説です、文章の上手さもこの時代の名手ならではの技術を感じます、そしてやはり映画化に際しての脚色の見事さには脱帽です、最近でもありがちなことですが、原作小説が良いから必ずしも映画化が成功するわけではないわけで、改めて省略の美学を考えさせられました、小説好きの読者には戦後の古典のひとつとしてぜひ奨めたい本です、

映画は美人女優揃い踏みのオールスター作品なのでとても小奇麗に作られていることも分かりました、著者の素晴らしい文章によって綴られる微にいり細にいった描写から浮かぶ昭和30年頃の光景の一部は現在とはそうとうに異なる臭うような不潔さだからです、主人公が最初の晩に布団に新聞をひく描写など男の側からはかなりぞっとするような光景なわけで、
5賢い女
幸田文を読むと、祖母や母の生き方、教えがよみがえってくる。
奥ゆかしく、それでいて賢く、昔の女は身を処してきた。
この本でも、見慣れない世界をじっと観察する主人公の目の鋭さと、
応対の見事さに舌を巻いた。
5サクセスストーリー
女中として「くろうと」との世界に入った梨花。いつもながら周りを観察する目はたしかである。世間でいう苦労にも決して負けてはいない。どこかおもしろがって観察しているが、自分とは別の世界に対する尊敬があってすがすがしい。こうして生きていれば、打ちひしがれたりくじけたりすることはない。自分に自信を持って強がっていても、主人のあでやかな姿に心が動いたり、いろんな男と関わってこそ女は情感がますということばを聞いてどぎまぎしたりする。「くろうと」の世界の人間模様がいきいきと描かれている。幸田文はいつもにくらべ自分を抑え観察者に徹している。読んだあとに元気が出てくる話である。

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