金色夜叉 (新潮文庫)
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小学校は旧かな遣いで学んだ私はさして苦労なく読んだが、「十九にて恋人を棄てにし宮は、...二十あまり五の春を迎へぬ。(25の春を迎えた)」といった美文調の文語は、若い人には一寸辛いかも知れない。しかし連載で読売新聞の購読数を飛躍的に伸ばした虚構の面白さは現代でも素晴らしい。覚悟を決めて掛かれば、百年前の日本社会を味わいつつ日本文学の金字塔を堪能することができよう。
菊池寛が大正9年に発表した「真珠夫人」を東海テレビが、時代を終戦後に改めて昼ドラにしたのが大ヒットになり、2002年の流行語になった。同じことをすれば金色夜叉も大ブレーク間違いない。そういう息も継がせぬ面白い展開だ。
ビジネス書ばかりに読書が偏重していたので、ここらで人の気持ちや機微が分かる
恋愛モノを読んでみようと思いました。どうせ読むなら、時代の洗礼を受けてなお残っ
ている古典がいいだろうと手にとって見ました。
○心に残る言葉
確かに地の文は読みにくいですが、読みやすい会話部分を拾っていくだけでもストー
リーは理解でき、魅力的なセリフが散りばめられています。
p.41 固より世の中というのはそう面白い訳のものじゃないので、又人の身の上ほど
分からないものはない。(中略)儚いのが世の中と覚悟した上で、その儚い、つまら
ない中でせめては楽しみを求めようとして、つまりわれわれが働いているのだ。考え
てふさいだところで、つまらない世の中に儚い人間として生まれてきた以上は、どう
もいまさら仕方がないんじゃないか。
p.237 高利貸しを不正というなら、その不正の高利貸しを作った社会が不正なんじゃ。
必要の上から借りるものがあるで、貸すものがある。なんぼ貸したうても借る者がな
けりゃ、我々の家業は成り立ちはならん。その必要を見込んで仕事をなるがすなわち
営業の魂なんじゃ。
→ナニワ金融論の世界ですね。確かにこの世の中は需要と供給によって成り立ってい
ます。需要があるから高利貸しも成り立っているのです。高利と知っていて借りてい
るのです。そのサービスがなければ、もっと困る人がいるはずです(延命にしかなら
ないのかも知れませんが...)。借りたものは返すのが人の基本です。それができなく
なると人は倫理上耐えられなくなります。今の世の中は自己破産というエグジットが
あるので、当時に比べるとキャッシングなどの高利について抵抗がないのかもしれま
せん。
○どんな人に読んでもらいたいか。
明治時代の男は、男尊女卑で「お前を愛している」とは言わないものだと思ってい
ました。それが新聞で連載されて、大衆に愛されていたというのが意外でした。女性
の純愛モノはよくあると思いますが、「明治の男の純愛」を垣間見ることができます。
筋は有名なので改めて書くまでもないと思うが、主人公が将来の許嫁の鴫沢宮が金に釣られて他の男に傾いたことに絶望し熱海の海岸で宮を足蹴にし高利貸しの手代となって金銭の鬼となる、というもの。描写と言い、筋と言い、若干ドラマティックすぎる嫌いがあるかも知れない。が、著者の仕掛けた構成の巧みさにはさすがに驚かされた。一難去ってまた一難、これが延々と繰り返さるわけだが、金銭の鬼と化した貫一の宿命やかつての友人達との関係が巧みに描かれ、思わず引き込まれてしまった。解説ある自分が死してのちも、金色夜叉の連載を墓前に捧げてくれといった一読者の気持ちも、大げさなようで読了した方には分かってくると思う。
確かに読むのは大変だ。が、読んだ後には必ず感動がある。未完の作品とはいえこの作品の持つ味わいはとてつもないものだ。お勧めする。
それでも今まで読んだ本の中で一番泣いた本になった。
読み終わった後も泣いてしまった…。
例えは変だけど、これだけ展開が気になった本は京極さんとハリー・ポッター以来。
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