婦系図 (新潮文庫)
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主税「お蔦(つた)、別れてくれ」
お蔦「いいえ、別れろ切れろは芸者の時にいうことば。今なら、蔦には枯れろと、あたしには死ねとおっしゃってくださいな」
満場の感涙を誘う名せりふは、しかし読めども読めども現れない。ページを繰っていくと、いつの間にやら東京市の下町から静岡に舞台は回り、土地の名家からそれぞれエスタブリッシュメントに嫁いだ美しい夫人たちを次つぎと誘惑する主税の姿・・・。
無尽蔵とも思える語彙。和語、漢語はては英語ドイツ語などヨーロッパ言語までを駆使して織りなされる綺羅、星のごとき比喩。なかでも衣装の表現は文字通り絢爛豪華、上流階級の貴婦人がたのお召し物は言うに及ばず、場末の陋屋にひそむ貧民の垢じみた身なりまで、比喩だけはまるで大名装束の如し。
旧かな正字ではなく、適当に現代語訳してあれば、原文の香りをさして損うことなく気楽に味わえる。
いささかご都合主義的な筋立てだが、それを補って余りある収穫あり。
これが綺麗 原作がどうのとか越えて素直に見れたのでいい映画だと思います
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そう思わされてしまった一冊。
別作(当本には未収禄)「湯島の境内」で有名な「別れろ切れろは、芸者のときにいう言葉…」のお蔦と主税の物語の、本作となるのがこれです。
「婦系図」というだけあり、沢山の、気質も容貌もまたその境遇もさまざまな女性が登場します。
「湯島…」でクローズアップされた二人の関係はあくまで本作の中では「ストーリーの一節」であるのにすぎず、それによって起きるもっと大きなうねりが、ラストへと一息に流れ込みます。
まさか、(いうなれば)ドンデン返しでアッと驚かされるなんて、泉鏡花作品では期待してはいなかった!(笑)
読み終えてじーん…と満足感を味わった久々の良作です。
堅苦しく考えず、娯楽として楽しめる良書だと思います。



