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美徳のよろめき (新潮文庫)
三島 由紀夫
価格: ¥380 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1960/11
ISBN: 4101050090
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 129150位
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美しい文学とはこれか・・・
学校の授業でしか聞いたことの無かった「三島由紀夫」「美徳のよろめき」。
文庫本の薄さから手軽感もあり、読んでみました。
はじめはなかなか慣れない文章に読み難さも感じましたが、徐々に引き込まれます。
引き込まれるのは、その文章の美しさ!ストーリーは普通の恋愛のお話。
でも、普通の話が美しく表現され、感動してしまいした。

もちろん内容の面白さも楽しみの一つではありますが、文章を楽しむ事を教えてくれた作品です。
無題
あらすじだけ見れば平凡なメロドラマなんですが、残酷なまでに冷徹な視線で不貞の女主人公のみの内面を追うことにより、結果的には泥を被せないように、注意深く配慮されています。作者は優しいなー、と思ってしまいました。土屋に恋する序盤と違い、最後の方では節子が苦しみ続けますが、それまで彼女のひとり芝居だったので土屋に対する反感はまったく湧いてきませんでした。もしかしたら「自業自得」という言葉こそ、はじめから節子が望んだ言葉なのかもしれません。
ストッキングを土屋に見せるシーンが可愛いです。                      
不倫の果てに
ヒトコトで言えば、「熱い!」です。
不倫にも、こういうもどかしさ、苦悶、悩みはあるんだ、と感心してしまいます。
やはり、三島だからでしょうか。
不倫って聞こえが悪いけれど……うーん、節子の潔い誇りを見せつけられると、「そうか〜、それでいいんだな」と妙に納得させられます。
感情の逆説的な表現には驚かされます。
当時、「よろめき」という言葉が流行ったぐらいなので、夢中になる作品の一つでもあります。
「不倫もの」のひとつのプロトタイプ
これは随分久しぶりに読んだ。初めて読んだのは高校生の時だったろうか。全く印象に残っておらず、20年ぶりに読んでみた。不倫ものである。もっとも当時は「不倫」という言葉はなかったのだが。道徳・貞淑を絵に描いたような節子が、「恋」と「世間体」の間で煩悶する様が三島独特の繊細な筆致で描かれる。今では、この手のものはいくらでもあるのだが、当時としてはそれなりのインパクトがあったに違いない。アベックホテルなどという死語が登場するが、文体そのものは本当に洗練されていて古さを感じない。節子の夫はただ寝るだけである。
体験できないことをも美しく描く三島由紀夫の才能
この物語は不倫の話ですが、難しく感じました。三島由紀夫ってこんなに難しかったっけ…?と思ってしまいます。以前読んだ本で言うと、潮騒では文章とそこから連想される場面場面の美しさに感嘆し、午後の曳航では最近多発している少年犯罪を連想してゾッとし、永すぎた春ではオーソドックスな時代恋愛を味わい、若きサムライのために、では感心できるところにウンウンうなずき、感心できないところではオイオイと思ったものです。そのような三島作品ですが、この小説はすぐに一言で表せるところがあまり見当たりません。私の読書不足のせいでしょうか。

難しく感じたと言うのも、これは時々の状況によって刻々と変化する女主人公(日本語で言う「ヒロイン」は「主人公」に対する呼応、主人公の相手というニュアンスがあるような気がします。この作品では紛れもなくこの「節子」が主人公ですから、『ヒロイン』ではなく「女主人公」と言うのがふさわしいでしょう)の心理描写が中心であり、三島作品に特徴的な情景描写は少なかったからです。私は女性ではありません。ところが、この作品では女性のその語り、心理の変化、心理の内奥の描写が大部分であったため、私にはやや理解が困難でした。

また、難単語も多かったので、辞書は必携でした。辞書がなければ、もっと理解が困難だったかもしれません。電車内で辞書を使わず読むと言う芸当をすれば、この本の理解は完全に失敗に終わってしまったでしょう。

とは言え私が「男である」ことは三島自身にも当然当てはまります。従って私は、三島のこのような「自分の体験できないことを描く」才能に驚かされました。実際この小説は多くの婦人から賞賛されています。それは、三島がそのようなことを描くことに成功していることの表れではないでしょうか。

しかも終盤の流れは実にうまくまとめられていました。潮騒や午後の曳航、永すぎた春を読んだときもそれは感じましたが、このような点でも三島の才能の凄さに感嘆の吐息を上げずにはいられません。




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