この中に収録されている「早春の旅」は 文学者が書いた奈良
訪問記の白眉の一つであると考えている。
志賀は名文で鳴り響いている。美文ではなく名文であるという点
がミソだ。美文は 漢文を下敷きとした 幾分 飾った日本語である。
勿論 綺麗に出来上がった美文の美しさは 中々のもので読んでいて
も楽しい。
一方 志賀の名文は 簡潔で無駄がなく しかも的確な点に魅力が
ある。実際 彼の文章は読んでいて よどみがない。さらさらと読め
てしまう。気がつくと 読み終えている。そんな体験ばかりだ。
そんな志賀の作品の中で 「早春の旅」は幾分冗長な印象を持つ。
事実 長い作品でもある。しかし 奈良を的確に描いた本としては
中々得がたい。
灰色の月・万暦赤絵 (新潮文庫 し 1-6)
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