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河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)
芥川 龍之介
価格: ¥380 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1968/12
ISBN: 4101025061
おすすめ度:4.5
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蜃気楼
 この短編集の「蜃気楼」こそが 僕が最も好む芥川の作品である。

 鵠沼での芥川の生活を描き出したエッセイであり 筋らしい筋は無い。但し そこに使われる日本語の美しさは比類がない。

 芥川は もともとはストーリーテリングの巧みな作家である。彼の王朝物を読む限り あざといほどのストーリーを駆使しており 彼の知性のありかがいやというほど思い知らされる。
 そんな芥川が 晩年に ストーリーを棄てたということなのかもしれない。
 
 本書に収められた「河童」は 日本で書かれたガリバー旅行記のような話だ。ここにおいて芥川は自分のストーリーテリングの最後の作品を書き上げたのだと思う。短編しか書けなかった芥川にしては 大長編である。

 そんな芥川が 最後にたどり着いた 筋の無い短編に 僕は 芥川の後姿が見えるような思いがする。芥川は 才気が有りすぎた。そんな才気が 芥川を葬っていく姿が見える。「蜃気楼」とは 暗示的な題名だ。芥川自身が 海上に浮かぶ蜃気楼になっていったということだと思う。
死ぬまで手放さねぇ〜ぇぇぃ…それ実験精神!YEAH!!
芥川、まだ若ぇ!なのに晩年…の頃に書きまくりの作品収めまくりの一冊っす!読み手、決して勇気づけ&ポジティブゥ〜にはしねぇ作品ばかりっすが、相変わらずの明晰頭脳でキッチリ造った的な、一文たりとも粗略にMAKEってねぇ感は堪能できまっす!皮肉度濃濃の文明批評戯画「河童」や、不愉快極まりMAX!But神経描写(心理描写でも内面描写でまくて、あくまで神経っす!)同時に極めMAX!な隠れ傑作「玄鶴山房」、志賀直哉スタイル導入の淡淡な不気味さ微漂いの佳作「蜃気楼」、そして自殺直前にMEKEってた、もう詩にニァ〜なくれぇビュゥティ〜な不協和音奏でまくりの遺作「歯車」と傑作・佳作並びまくりの一冊っす!繊細児芥川の病める薔薇的メランコリィと実験性が融合しまくった、ファンはゼッテェ外せねぇ一冊っしょ!リピるっすが決して人を幸福にする作品集ではねぇっすが、死を目前にした芥川鬼気迫りまくりの異常感はスゲェ…っす!芥川、やっぱサイコサイコサイコッ!YEAH!!
自殺する直前にしか書けない作品
 『歯車』は、私が芥川の作品で最も好きなものである。内容、文体ともに異様な、強い迫力がある。これは自殺する直前だから書けたのだろう。義兄の自殺から始まって、《誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?》で終わるこの作品は、芥川の神経症が限度を超えていたことを表している。私も憂鬱で神経過敏だった時期に本書を読んだので、共感できるところが多かった。忘れられない一冊である。
ぼんやりしていたのか?
全て晩年に書かれたものである故に自己とは何かを追求した趣の強烈な作品群である。

「大道寺信輔の半生」では少年期の頃の作者がモチーフであり、世の中の虚偽を知り抜き、それによって文学に対する姿勢が始まったことを思わせる。

「河童」は幻想的な世界を舞台とした社会及び思想に対する風刺である。そこには宗教、出産、産業、恋愛、戦争、身分、生死等への考察が含まれており、河童の世界の常識と照らし合わせることで一層それらにおける我々の知の枠組みはどんどん崩壊していく。そのような作品が僅か数週間で完成したというからまさに驚異である。

「或阿呆の一生」は自殺に到るまでの自己反省的な心情で綴られ、従って非常に暗澹としていて、またスリリングである。

「歯車」では過度に自意識を持ってしまう故に不安と恐怖に苛まれ、運命が全て身に降りかかってくるような作者の圧迫感で一杯である。

「ぼんやりとした不安」を感じたから自殺したと言われているが、もちろんその不安が具体的に何なのかは示されていない。しかし、作品全体を通して、例えば黄色いイメージのある娘とのねじれた関係が関与していること等が察せられ、案外不安はぼんやりとと言うよりはっきりとしていたのではないかとも考えられて興味深い。
ありえないけど現実的な話
ユーモラスだけど、ちょっと現実味があって自分の身にも起こり得そうな話です。人間社会全体を批判するために架空のキャラクターである河童を使うあたりも、なにかこだわりがある感じがして恐ろしいです。

この作品は自殺前の芥川が感じていた人間社会(とくに日本社会)への痛烈な批判が描かれていると言われています。確かにそれは見ものです。しかしそれに隠れているような感じになっていますが、”異文化交流の産物”をうまく絡めて描いていると思います。願っていた日本への帰還が果たせたはずなのに、主人公がまた河童の世界に戻りたいと願う場面。この異文化に適応した結果自国の文化を否定するようになる、まさに異文化の外国で生活する人なら一度は体験するUターン症候群。一種の逆カルチャーショックです。この現象と作者自身の日本社会への失望をうまくからみ合わせたところに作者のすごいテクニックを感じました。しかし異文化から帰ったときのカルチャーショックの経験なら誰しも持つものだし、通常なら数ヶ月で回復するはず。ところが彼の心にはずっと河童が住み着くことになる。ということは異文化交流うんぬんの問題ではなくなる。彼が戻った世界は河童の国から見たら”阿呆”の考えそのままの世界。住みにくい、矛盾の多い世界の否定、そして放棄。これが彼の自殺の理由を物語っているのではないかと思わせる。河童の世界で楽しく生きている芥川を想像するとちょっと心が救われるのだけど。



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