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戯作三昧・一塊の土 (新潮文庫)
芥川 龍之介
価格: ¥420 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1968/11
ISBN: 4101025053
おすすめ度:4.5
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花火のような我々の生
 「舞踏会」という作品は 高校時代に教科書で読んだ記憶がある。鹿鳴館を舞台とした短編だ。

 鹿鳴館も中々短命な舞踏場であったらしい。安普請で がたがた揺れたと聞く。当時の日本政府が 急に西洋化しようと焦っていたことの象徴と言ってもよいのかもしれない。そんな「儚さ」をテーマにしているのが 「舞踏会」である。

 主人公の若い女性が外国人と踊る。踊った後に 花火を見る。花火を見て その外国人が「花火のような我々の生を想っているところです」と一言つぶやく。それだけの話だ。その話が 今は老婦人となった 主人公の女性が回想しているだけの話である。

 これを読んでいると つくづく芥川の短編作家としての腕の冴えに唸らされる。鹿鳴館と花火という取り合わせから 人生の一瞬のきらめきを取り出し それを 主人公をあっというまに老婦人にしてしまうことで 残酷なまでに 僕らの脳裏に定着させる手腕は 掛値無しに天才の仕事だと思う。
 例えば フィッツジェラルドあたりの短編集に入れたとしても遜色が無いだろうし むしろ その中でも際立った一編になるかもしれない。これは僕が日本人だからそう思うのではないと思っている。

 芥川自身も 一瞬のきらめき とも言うべき人生だった。「花火のような生」とは 芥川自身の人生を予言したものになったと思うのだ。

 

 
沢山の人生を生きてみるために
私は、自分の人生とは別の人生を体験するために、小説を読みます。小説は様々なリスクや、自分の限界を越えて多くの人生を体験し、怒り、泣き、笑い、感動することのできる素晴らしい機会です。こうした目的で小説を読む私にとって、芥川龍之介は最高の作家です。時代、職種、階級、年齢などありとあらゆる異なる設定の人物が、様々な文体で描かれた短い小説が山ほど有り、しかもそれぞれが、音、色、温度そして光とありとあらゆる感覚の描写が総動員されて、自分がまさにその場にいてその小説の中の人生を生きている臨場感、リアリズムが感じられるからです。自分の生きている世界より少し広いだけの人間社会を描いている同時代の他の作家とは全く違います。しかし、惜しむらくは、ほとんどの作品が人間のわびしさ・さびしさを描いており、人生の「光・きらめき」を描いている作品が少ないということです。この短編集の中の「戯作三昧」「お富の貞操」は数少ない「光」を描いて、暗闇の中を走る閃光の様に素晴らしい作品です。「雛」も最後の一文さえなければそうなのですが・・・・。とにかく芥川を読むなら「戯作三昧」を外すこと無かれ。
やはり芥川は凄い
自由な時間ができて、久しぶりにふと芥川の短編に触れたくなった。
数ある短編集からこの本を選んだのは「舞踏会」「枯野抄」を読みたかったためだ。

「舞踏会」は「開化物」と呼ばれる一連の作品のひとつだが、
その洗練された豪奢な文章、そして鮮やかな幕切れは見事である。
流麗な美しさのなかに一抹の憂愁を秘めた忘れがたい短編だ。

また、「枯野抄」は芭蕉の臨終にあたった門弟たちを描いているが
実は芥川の師であった夏目漱石の臨終を下敷きにしていると言われ、
芭蕉と漱石という二人の巨大な存在を二重写しにして読むと一層興趣のつのる作品である。
その他のリアリズムを踏まえた作品などもそれぞれに味わい深い。

芥川は三十五歳という若さで死んだが、
その感受性と教養に裏打ちされた知性は平均化された現代人の到底及ぶところでなく
彼の残した作品の数々は今も消えない光芒を放っていると思う。
若い人たちも是非読んでみてください。芥川の鋭い感覚と普遍性にきっと驚きますよ。
「戯作三昧」が絶品です!
若き日の理想に燃える芥川自身の心境を「南総里見八犬伝」の馬琴になぞらえたのであろう、「戯作三昧」が絶品です。
馬琴の孫が言う言葉。---「浅草の観音様がそういったの」
観音様がどう言ったのかは本書を手にとってください。私も初めて読んだとき、涙でいっぱいになりました。
巧みな心理描写が絶品です
滝沢馬琴の創作への思いを小説にした「戯作三昧」、農家の働き者の寡婦と姑の姿を描いた「一塊の土」の表題作を始め、芭蕉の死を看取る弟子たちを描いた「枯野抄」、たばこ屋の店員との交流を描いた「あばばばば」など芥川龍之介の江戸期もの、明治開花期ものと言われる作品13篇を収録。

芥川龍之介の作品はどれを取っても心理描写が巧みで、味わいが深いのですが、この作品集も例に漏れず素晴らしい内容です。とは言え脚注が多く、内容もやや難解なので、氏の作品を初めて読むのであれば、まずは「蜘蛛の糸・杜氏春」、「地獄変・偸盗」、「羅生門・鼻」あたりから始めるほうが無難でしょう。




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