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ヴィヨンの妻 (新潮文庫)
太宰 治
価格: ¥380 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1950/12
ISBN: 4101006032
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 57428位
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トカトントン
今からこれを読む人がうらやましい。最後の主人公の一言が、この小説の要です。
前半はその一言のための準備です。絶対にそこを先に読んではいけません。

死ぬ直前に、この一言が言えたら良いのになあとか、遺言状の最後に書き足せたら
面白いだろうなあとか、人類が滅亡する前に神様が出てきて言うと面白いのになあ
とか、某国の独裁者が引退する時に人民に向かって言うと(以下同文)、某大国の
指導者が戦争に勝って負けた方に(以下同文)、この小説で色々妄想できます。
普段使うと人間失格になるので使いません。

絶望感に浸ろう
自分の人生が終了したと感じてしまって仕方がない、そんな時に読みたい本です。2回通読しました。内容は決して読みやすいものではないですが、薄いので楽に読み終えることができます。

絶望的に暗い時には、それこそ鬱病の人がモーツァルトを聴きたがらないのと同じように、明るい本など読みたくないものです。暗い時には暗い本や音楽などを鑑賞して絶望感に浸る。そうすることで精神がかえって安定することがあるそうです。

太宰は基本的に家族を省みず自分のお金は自分で使ってしまうと言うダメ人間ですが、自らの手で自らを駄目な境遇に陥れてしまうと言うその人間性には妙に親近感を覚えるものがあります。

お薦めは「おさん」。これは読みやすく比較的わかりやすいです。この短編集に限らず多くの短編において、主人公は太宰を模しています。そうして、家族を省みず他に女を作って最後には自殺に至る(そこまで書かれていないことも多いですが)過程が描かれています。

この短編集のほかの短編集に含まれている小説にもそのパターンは当てはまり、悪く言えば暗くてワンパターンなのかもしれませんが(それゆえ太宰を嫌いと言う人も多いのだと思います)、絶望的でいてどこか人を引き込むその描写には、やはり惹かれるものがあると思えるのです。
「子供より親が大事」という真理
「親友交歓」生まれ故郷の青森県に疎開しているとき訪ねてきた自称親友。彼は主人公の家でさんざん傍若無人の振る舞いをしている。それなのに帰り際、主人公に「いばるな」と捨てぜりふを吐いていく。
 あの傍若無人の振る舞いは、強がりだったのだ。ヘコヘコへつらう裏返しの行為だ。人間描写力が凄すぎるよ。
「トカトントン」敗戦後の復興の槌音のはずなのに、主人公はこの音が聞こえてくると脱力してしまうという。槌音は力がみなぎるような気がするが、敗戦のショックとも言うべきものだろう。信じてきたものが敗戦で粉みじんになってしまった精神。敗戦を生きる人々の心を代表していたのではなかろうかと思う。
「ヴィヨンの妻」あの詩人バイロンの妻と本作品の妻との関連性が分からなかった。今回、ハタと気づいた。けなげな「さっちゃん」は大谷の妻だが、太田には詩人だ。なんのことはない「詩人の妻」というだけのことなのだ。生活破綻型詩人の妻の鏡が提示されているということだろう。
「家庭の幸福」は、家庭の幸福を追求すると社会に不幸をもたらすという主張。男は家庭の幸福などにこだわるものではない、というつよがりがカワイイ作品。
「桜桃」これを読み返したくて今回、この文庫を手にとってみたのだ。
「子供より親が大事」
 このセリフ確かめたかったのだ。
「子供よりも、その親のほうが弱いのだ」そうなのだ。子供のほうがずっとズーズーしくて、強い。
 それなのに世の中はどうして強い大人は弱い子供を守らねば、という概念が通用しているのだろう。
 大人はドンドン犠牲になって子供を育てるなんてとんでもないのだ。これも本作品を通すと、いいわけにしか思えなくなりがちだが、それは真理なのだ。
 それにしてもひさびさに読んだが、文体、描写力、バツグンの切れ味だ。全然弱さが感じられない。
トカトントン
これまた、恐ろしい作品である。

特に、「トカトントン」という短編はなんともいえない。

「虚無の中の虚無にあるのです」という一説があるのだが、そこまで人間はいけるのだろうかとしばらく考え込んでしまう。
ヴィヨンの妻
最後の言葉「私たち~」とは誰を指しているのか?一つ一つの言葉の中に太宰の気持ちを自分なりに考えていくとより深みをかんじられる作品です。



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