機械・春は馬車に乗って (新潮文庫)
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このレビューは特にこの短編集に収められている「春は馬車に乗って」について書きたい。ある夫婦の物語であり、妻は病にふせっている。夫は彼なりに献身的な看病を続けるが、妻の病状は悪化し・・・。ストーリーは暗いが内容はそうでもない。刻一刻と死に向かって進んでいく妻ではあるが、体が弱くなればなるほど挑戦的に夫に罵声を浴びせ、難くせをつける。夫も夫で死にゆく妻を見つめることに逆転した快楽をみつけようとする。それぞれに生きることをあきらめず妥協しない夫婦の生きざまが鮮烈に記憶に残る。技巧派として有名な横光だが、彼の作品の最もすばらしい部分は私小説的な内容においてこそ生きているとぼくは思う。同時に収録されている「御身」などでもそうだが、彼の悪く言えば単純、よく言えばまっすぐな性格が、ときに気持ちよく、ときにこっけいで、ときに悲しい。そんな横光の魅力が遺憾なく発揮された美しい短編。ちなみに川端康成がしょっちゅうエッセイの中で彼に触れているが、川端と兄貴肌の横光という組み合わせが面白い。よければそちらもどうぞ。


