ひとつ前に戻る

千羽鶴 (新潮文庫)
川端 康成
価格: ¥460 (税込)

文庫
出版社: 新潮社
発売日: 1989/11
ISBN: 4101001235
おすすめ度:4.5
Amazon ランキング: 44425位
発送可能時期: 通常24時間以内に発送

amazonの詳細ページへ
欲情する名作
欲情した。エロ小説でないもので欲情したのは源氏物語のマンガ「あさきゆめみし」があったが、「千羽鶴」も負けずに欲情させてくれた。
ストーリーもおもしろい。川端の男女のあり方って現代の節操とは違っているんだろう。源氏物語に通じているところがあるようだ。「千羽鶴」においてもまたしても無節操な、あまりに不倫理な、そして奔放すぎる男女の濡れ場が散りばめられているが、具体的な描写は皆無である。普通の会話のやり取りで読者を欲情させるとは、その文章テクニックがスゴイ!
父は友人の未亡人と関係を結び、息子の菊冶がその未亡人を引き継ぐとは! ちょっと足りないと思われたこの未亡人母娘が、物語の終末に近づくにしたがって意外なほど存在感を増し、未亡人はついに「名品」と評価され、「差し上げるものは一流品でないと」といって未亡人よりいただいた二流半の茶碗を娘文子が菊治のお宅を訪問して割ってしまい、そして自らを絶対の存在に位置づけてしまうのだ。お茶の師匠であるちか子(これも父の愛人となっていた)のような厚かましい毒婦とはまるで違って、遠慮深く、駆け引きもなく、引っ込み思案のはずだった存在がである!。
これは源氏物語の宇治十帖の主人公級の浮舟を髣髴とさせるではないか!
「雪国」「山の音」にもあったが本編でも重複する説明箇所が見られたのは、短編を少しずつ繋いでいく書き方に由来するところがあったようだ。それが気になるといえば気になるが些細だ。
「山の音」「千羽鶴」を「雪国」の延長と定説のようにいわれているがそのわけは分からない。駒子、菊子、文子はそれぞれ芸者、嫁、父の愛人の娘である。この三人に共通するものは女であるということだけなのだ。むしろ島村、信吾、菊冶に共通しているところがあるのだろうか、これもありそうにないのだが・・・。
徹底した美
著者は、どの作品においても、たゆまない美の追求を怠らない。
この徹底した姿勢は、三島や谷崎らと、ある意味、通ずるところがある。

「みずうみ」や「眠れる美女」といった、少し異端とされる作品も、すばらしい「美」である。
そういう観点から本書を読むと、本書には、著者の追求する美が濃縮されている、と感じる。

すなわち、背徳の美、芸術の美、生(あえて死という言葉は使わない)の美などである。
背徳の美に関しては、著者の表現の前には、背徳という言葉すら、霞んでしまう。
菊治と太田婦人の交わりは、文学的表現の一種の境地ですらある。
それらは名器の芸術的美と、絶妙な絡みを見せる。

一方、リアリズムの一端も盛り込まれる。
つまり、生に対する絶対的な美である。

この作品の結末は、ある程度想像は出来るが、明確には示されていない。
本文庫は、続編である「波千鳥」も収録されている。

私の主観であるが、「古都」と「舞姫」のエッセンスを融合すると、本作品になるのではないか、という気がする。
著者の作品群のうち、第一級の作品である事は確かだ。
背徳的な愛の象徴
初めて読破したとき、ドキドキした。
主人公の淫蕩な生活にビックリしてしまった。
何度読み返してもドキドキする。
そういう意味で名作。



本のみちしるべ Powered by Amazon Web Service
PR: FS研究室