ひとつ前に戻る

カオスの娘―シャーマン探偵ナルコ
島田 雅彦
価格: ¥1,680 (税込)

単行本
出版社: 集英社
発売日: 2007/06/05
ISBN: 4087748626
おすすめ度:3.0
Amazon ランキング: 49594位
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また読んでしまった。
通奏するところに大きく外れるものはないことはわかっていながら、また読んでしまう。
それにしても、サナダが訪れた最後の旅館は、強羅花壇でしょうか。友人の建築家は、やはり竹山聖でしょうね。
ファンタジーとミステリーの狭間に‥。
祖母からシャーマンの能力を受け継いだ少年・ナルヒコと、記憶を失った監禁事件の被害者・亜里沙。
そして、ガンで余命幾ばくもない大学教授・真田。
空港ですれ違った亜里沙に強い恐怖の予感を感じ、後ろ髪をひかれながらも、ナルヒコは網走での
シャーマン修行に出発する。
 邪悪な霊に憑かれた亜里沙は、自分を利用し、食い物にする男たちを次々と殺害。
 そして、そんな亜里沙を救おうとする真田。
 修行を終えたナルヒコが東京に戻り、三人が出会い、三つの物語がひとつになるところから、
物語は急転回をし始める。
 亜里沙を救う衝撃的な解決策を打ち出した真田を、もう、誰も止められない‥。
見ないようにしているもの
聞くだけでゲンナリするような性犯罪や、社会問題は、自分に降りかからない限り所詮他人事でしかないと、正直思います。そういった、疲れるからなるべく見ないようにしている問題が、島田氏流の飄々としたタッチで丁寧に描かれています。
表題のカオスとは何のことか。非常に現実的な地球温暖化問題から、世界情勢〈テロの脅威)、凶悪化する若者の犯罪、家庭環境が子供に及ぼす影響に至るまで、この世のありとあらゆる現象が何か見えない糸で繋がっているという空恐ろしさそのものがまさに「カオス」なのではないかと、読後に感じました。シャーマンなども登場し、美輪さんの帯コメントにもあるように、4次元をも巻き込んだ非常に広大で面白い内容です。

作中で一番普通の人生で、まともな考えに見えるセンセイがたどる運命がこそが、この混沌として何一つ解決しない世の中の雰囲気をよく表していて、グサリと来ます。ここはさすがに涙しました。
陰のカオスがあるように、陽のカオスもあって、それを自分で掴み取る力を持っていたいと前向きに思える意外とシンプルなラストも好きです。

「所詮他人事」が次の悲劇を生むこともまた、同時に思い知らされる一作。
期待して読んだのですが
古本屋にて半額で買って読んだが、残念ながら期待はずれだった。まず第一に、アイヌのシャーマンの孫という設定のナルヒコは、夢で将来を予知するが、アイヌの予知夢は株やら競馬やらをあてるようなものではないので、違和感がある。アイヌ=不思議な力を持つもの=近代人が失ったものを持っているという使い古された近代人的優越感が映し出されているといっていい。まぁそれをおくとしても、ストーリー自体に問題がある。亜里沙という女の子の「堕とされていく」筋道や、サナダという大学教授の自爆テロはそれなりにリアリティがあったが、それは探偵が謎を解くというミステリではなく、犯罪小説、クライムノベルのたぐいだといっていい。もちろん、だから悪いといっているのではないが、だったら表題に「シャーマン探偵ナルコ」はないだろう。ナルヒコを「ナルコ」と呼ぶシーンは一度もなく、ゆえにこの「ナルコ」というサブタイトルでの名前も気になるところだ。だいたい、人間の悲しみのにおいや、声なき声、そして未来まですべて察知できるナルヒコが事件を見つめれば、すべてがお見通しになってしまい、ミステリにはならないはずだ。ミステリの純粋論理と「自称」しているものにも、疑問は感じているが、それにしても論理自体が成り立ち得ないこの小説にシャーマン探偵といういい方は表題に偽りありといわれてもしかたあるまい(純粋論理といってもすべて「帰納的論理」でしかない。そんなものを読者があてられるわけがない。現実社会にはより高度な論理であり、また複雑系的発想とも通い合う「演繹的論理」がより重要であるからだ。演繹抜きの「純粋(帰納)論理」とは、試験管のなかだけで社会が運営されている、予測外の変化が起きる条件を最初から排除した状況しか想定していない脆弱さがある)。先月には読み終わっていたが、「やはり」誰もレビューを書いていないので、ここに記す。



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