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金毘羅
笙野 頼子
価格: ¥2,100 (税込)

単行本
出版社: 集英社
発売日: 2004/10
ISBN: 4087747204
おすすめ度:4.0
Amazon ランキング: 230162位
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わがままな作品
小説って二種類あるんだなと思いました。
作品として独立しているものと、特定の作家の創作物としてうけいれられるもの。
これが笙野頼子さんの作品でなければ、成立したでしょうか。
エネルギーはありました。
でもほとんどが、なにをいっているのかわかりませんでした。
神様に託つけて、自分の不満をぶつけたとしか読めない。
笙野さんだから許される作品でしょう。
笙野頼子の
 スタンスというのは尊敬するし、作品も好きなのだが、たとえば、この作品のように神様の話を滔々とされると、ちょっと嫌気がさしてしまう。
 スリップストリームの傑作、人間じゃなくて、自分が金毘羅だと気づいたことによって、生まれてからいままでを語るという、もう、傑作。
 なのだけれど、相性が悪かった。
歓喜
~壱で引き込まれ、弐でどうなることかと思わせられ、参であらぬところを引きずり回され、四で怒濤のように押し寄せる言葉と感情の奔流に完全にやられてしまい、劇的回心、とも言うべき金比羅としての自己発見のシーンに泣いた。そして最後の一文読了して茫然自失。(『レストレス・ドリーム』のラストシーンを、思わず読み返してしまった)
これまで10年以上笙~~野さんの作品を読み続けてきて、何かデビュー以来の積み重ねに対するひとつのクライマックス、でもあるような、最後の畳み掛けにはそんな勢いと歓喜を感じた。
私小説、SF、スラップスティック、エッセイ、論争、フェミニズム、シューキョーと宗教、その他もろもろを習合してついにここまでたどり着いた純文学作家の境地、これがひとつの到達点、と言われるの~~もうなずける。そしてもちろん通過点なのだと思うと怖い。~
新生笙野文学!
 一頁目から唸ってしまった。“一九五六年三月十六日深夜ひとりの赤ん坊が生まれてすぐ死にました。その死体に私は宿りました”……この手があったのか!
 つまり主人公は金毘羅。女の肉体を仮の宿としている、性別のない魂なのだ。かつてミシェル・ウエルベックは「素粒子」において、モテない男の怨念を描き、最終的に、地球が性別も肉体もない生命体で満たされる未来を夢想した。しかし「金毘羅」においては、初めから主人公は性別も肉体も持たず、時に窮屈な仮の肉体に支配されながら生きる。ジェンダーの問題に取り組んできた笙野氏の、過激な設定に驚く。「女も男になれる」なんて偽善的な建前の男社会バカバカしーい。だってもとから男でも女でもないんだもーん、てわけ。
 そして小説は、太宰・三島ばりの私語りのスタイルで進むかに見えて、決してそうはならない。幼少期の世界との違和というここちよい物語に浸ろうとするたび、高笑いする金毘羅に遮られ、関節をはずされる。金毘羅は人間を嘲笑して曰く“文学の世界で語るべき事が何もないと言ってる人間は、新しく語るべき現実から目を背けているだけ”“「私などない」と言ってる人間は自分だけが絶対者で特別だと思っているからそういう抜けた事をいうのだ”“大量死で文学が無効になったという人間も爆撃テロで文学が無意味になったという人間も自分は死んでいません”。これは、精神を失った肉体の物語が横行する小説界への反逆なのだ。
 デビュー後十年間の不遇時代を経て、その後十二年間“奇跡”的に小説を書き続けた主人公の戦いを、神々のたとえで描く後半はとてもスリリングだ。苦悩の果てに主人公は叫ぶ。“金毘羅だ! 私は金毘羅になった!”この金毘羅一代記は著者最大の力作だが、これが到達点なのではなく、新しい笙野文学が誕生したのだと思いたい。
精神の私小説
「恋愛はしなければならない(人生の喜び、人間形成のため・・・等々)」
「人と人とが交流しあって、人間は成長するのである」

等々といった、近代的な強迫的な人間観を覆せ、というのがテーマ
だな、と私は思いました。

だから登場人物が一切ナシ。家族や友人とのふれあいとか色恋沙汰も一切な
し。(それらへの嫌悪はあっても!)

出てくるのは神話のカミサマの名前ばっかり。

ココロの奥底を極めた時に行き着くのは、その時どきの上が押しつ
けた仏教や神社なんかじゃなくて、極私的な土俗である、

家族もいらない、村社会もいらない、ギョーカイもいらない、ただ
この「私」が村社会的曖昧さを排除した明瞭な日本語で、言葉を吐
ければ、物書きである「私」はそれでいい。

ただ人間の身体を器に生きている「私」は、「私」であることを貫徹するために、金比羅になった--。

精神の私小説です。笙野頼子さんの無頼の精神に拍手を贈りたい。




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