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カーテン―7部構成の小説論
ミラン クンデラMilan Kundera西永 良成
価格: ¥2,625 (税込)

単行本
出版社: 集英社
発売日: 2005/10
ISBN: 4087734358
おすすめ度:4.0
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小説にしかできないことは?
タイトルの「カーテン」とは、私たちがそれを通してしか世界を見られない「色眼鏡」のようなものです。それは女の化粧のように、世界の素顔を変貌させます。固定観念といってもいい「カーテン」を引き裂き、世界の生々しい手触りを発現させること。それこそラブレーやセルバンテス、フロベール、カフカらの作品に一貫して流れる伝統であり、小説にしかできないことだとクンデラは主張します。
文芸評論の範疇に入る本書ですが、難解な現代思想に基づいたどこか空疎な批評と大きく違うのは、すべてのエッセーがクンデラ本人の人生経験に深く根ざしているからでしょうか。誠実さを感じさせる名著です。
カーテンを引き裂く
この作品は、小説論であるが、社会や政治を論じているとも読める。
例えば、「誰が最初に官僚制の実存的な意味を発見したのだろうか」と問いかける。作者は、アーダルベルト・シュティフィターという19世紀のオーストリアの作家ではないだろうかと言う。マックス・ウエーバーが、官僚制の社会学的、歴史的、政治的な分析を行う50年前に、一人の人間が官僚体制化された世界で生きるとはどういうことか、『晩夏』という作品を通して語ったからだ。
現代社会に生きる私たちにも「官僚制」はやはり重い課題である。小説を論じながら、同時に現代社会のいくつかのテーマについて述べており、全体が濃厚な内容となっている。
クンデラの評論のなかでは
「評論」という言葉で遠ざけずに読んでほしい。クンデラがこれまで書いてきた文学論のなかでは、読み物として一番楽しめるかもしれない。
カフカ、フローベール、トルストイなどの作品が熟練した読みによって、驚くほど意外な側面を見せてくれる。何よりも小説が大好きな人たちにとって、読書によって得られる豊かな発見を再び教えてくれるのだ。そして、これまでになかった率直な言葉で、芸術にたいする愛を語っている。クンデラを読んだ事のない人にとっては入門に、クンデラの長年の愛読者にとっては、年老いた肉親と語り合うような、そんな静かで親しみ深い時間に浸れる。

挑発に賛同する市場?
 クンデラ独特の文学観を知ることができる点では、既刊『裏切られた遺言』『小説の精神』の流れを確認できる。訳者西永氏の解説にもあったが、これまでにないほど率直に自分の過去、南米作家との交流にも触れている点が新鮮だ。そこには老いの暖かさすら感じる。
 ところで、クンデラが指摘する「芸術まがいの幼稚な駄弁」とはフランスの文学市場を視野に入れての発言なのだろうか。そのフランスの文学市場が、この作品をベストセラーにできた事実を考えた。挑発を受け容れる余裕のある市場なのだろうか。ヨーロッパの中心国の動きから、日本の動きにも注意したくなる良書。



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